執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>キルステン様
(怒らないでとは、言わない。その代わり、もうしない、とも言わない。出会ったときよりも、随分幼くなったと自覚している。それを表すかのように、屈託なく、年相応の女の子のように、何も言わずにイタズラっぽく笑おう。彼との時間が、彼の言葉が、笑い方を教えてくれたのだから。続く言葉に、反応するな、というほうが無理ではないだろうか。斜め下へと落とした視線を、彼へと戻し、数秒の硬直。最初の頃は、よく硬直していたが、こうして彼の言葉で固まってしまうのは久々だった。次の瞬間、林檎のように紅く頬を染め「その…言い方はズルい」困ったように、眉尻を下げ、そんな言い方をされたら、此方が折れるしかないではないか!と訴える視線と共に、吐き出した言葉を紡ぐ声は思ったよりも小さかった。髪留めが、彼を表しているようで、とても嬉しい。無意識に出た言葉と同じくらいの時に、そんなことを考えた。腕を組む仕草も、2度と言うな
、と紡ぐ声も、怒りを表している。とても、伝わってきた。心に、とても響いた。だけれど、諦められない「わたしだって、キルステンが、他の人を食べるのは嫌だよ!」部屋に入ってから漸く相手と向き合うために振り返る。鏡越しにではなく、改めて瞳に写した相手の姿は、自分の言葉に怒りを覚えているのは勿論だが、空腹との葛藤も微かに見える。二の腕を握っている彼の手に、手を重ねるように立ち上がりながら、訴え「キルステンが、お腹がすいてるのを我慢して、辛い思いをするのも…やだよ…」距離を詰め、真っ直ぐに見詰め、そんな思いを心からしてほしくないのだと訴えを続け「だから、わたしを……」彼の空腹を満たすのが、他人なのも嫌だ。空腹を我慢し続ける彼を見るのも嫌だ。そんな思いが、再び口を動かし、先程と同じ言葉を紡ごうとして)
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