執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>テオ
(腹部から止め処も無く流れる命の源。皮膚を炎で炙られているかのような熱さと痛み。仰向けの状態から辛うじて視界の端に映る黒い影から、白い牙が覗く。ああ、とそこで理解する。運命の時が来たのだと。忘れていたはずでは無かった。しかし空腹で無ければ穏やかに、時には笑顔で語らう時間もこの人喰いの館の住人達と過ごせてしまっていたからだろう。もっと先の話しだと、思っていた。食われるなら継ぎ接ぎの彼以外に、と願ったはずなのに、いざその時になれば嫌だと、最後に彼に会いたいだなんて考えてしまう自分に笑ってしまう。涙の滲む瞳を歪ませた所で、第三者が現れた。右手に居た影の姿は消え、犬のような悲鳴が上がったかと思えば何かを何度も激しく叩き、骨が砕ける音。新たな影が近付けば、聞きなれた声が紡ぐ己の名に瞳を見開き、ゆっくりと首を右へと倒し。頬に添えられた冷たい掌。自分と、先程までそこに居たバケモノの血が充満した室内。「テ、オ……?」謝罪を繰り返す様に、どうして此処に居るのか、何故テオが謝るのか。大丈夫だと答えたいのに、普段はよく回る口も限界が近いようで。肩を上下させ、荒く浅い口呼吸を繰り返し。鮮血を吸い込み一色に染まってしまったミサンガの結ばれた右手を、頬に触れる相手の手の甲へとそっと重ね合わせ、幻覚では無く本当に側に居るのだと実感し「よかった……さいごに、会えて……」相手と最初に出会ったこの部屋で、彼に看取られ終わるのも何かの縁なのだろうか。自身が吐き出した朱色で濡れた口元を微かに持ち上げ笑みを浮かべ、心からの今の思いを吐露しては金の瞳を同じく見詰め返し)
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