執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>レベッカ
(ざわり。本能が騒いだのは空腹の為ではなく。悲鳴も、助けを呼ぶ声も聞こえたわけではない。けれど気付けば疾走していた。自室の扉をぶち破るのも構わず、使い魔がぎゃぁぎゃぁと叫ぶように鳴く声にも耳を貸さず。幾度となく往復した貴女の部屋へと続く廊下、近付くにつれて鼻腔を劈く鉄の香りは濃さを増してゆく。壊れた扉から月明かりが漏れているのを視認し、飛び込むように部屋に入れば―唖然。噎せ返るような血の匂い、目が眩むほどの鮮やかな赤。状況を把握するより先に、目にも留まらぬ速さでベッドの傍に寄ればバケモノの首根っこを鷲掴みにする。ギャン、と甲高く鳴いたそれを床に叩きつければ、馬乗りになり膂力に任せて滅多打ちに。最早バケモノの頭部は原形を留めず、ぴくりとも動かなくなった。それに要した時間は僅か4、5秒程度だろう。ゆらり、立ち上がれば、恐る恐るシーツの上に横たわる貴女を覗き込む。瞳孔が開いていくのが自分でも分かった。いつも明るく朗らかに笑ってくれる筈の顔が、嘘のように思える量の血に汚されていて。「レ、ベッカ……」名を呼ぶ声は僅かに震えていて、それでも静寂の満ちた部屋に鮮明に落ちる。一歩近づこうと踏み出したつもりだったが、呆然とした足に力は入らず、そのままベッドの側面の床に片膝を立てる形で前へ倒れ込む。「ゴメン……オレ…、オレ……ッ」バケモノを蛸殴りにした両手にはべっとりとどす黒い血液が付着しているが、それを憚る余裕はなく、縋るように貴女の頬に触れる。まだ辛うじて感じられる貴女の体温から、安らぎを得られないなんてこれが初めてで。手のひらから怒涛のように押し寄せるのは、今まで感じた事のないほど莫大な後悔―もっと早く、気付いていれば。そんな懺悔を言葉に出来るほど脳のキャパシティは大きくなくて、只々動揺に揺れる双眸で貴女を見詰めて)
(/暖かいお言葉とトピへのご配慮、誠に痛み入ります…!パーフェクトな文章を有難うございます、早速お返事させて頂きました。短い時間のお相手になってしまうかと思われますが、次回お会いした時にも続きを紡ぐことは可能ですので、今宵もお相手宜しくお願い致します!/蹴推奨)
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