執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>レベッカ
――え…?(後退った結果、後ろ手に扉のドアノブが触れたその瞬間、予想外の申し出に思わず気の抜けた声を零す。声の聴こえた方向、つまり貴女がいるベッドの方を向けば、するり、とドアノブから手を離す。華奢なんて表現では生ぬるい、あまりに細すぎる腕で自身のもう片方の腕をきゅっと握って「あ、あなた…もしかして新入りさん?」恐る恐る投げたのはまさに邪推。人を喰らう怪物を引き止めるだなんて、この屋敷の恐ろしさが理解できていないとしか思えない。もう随分長い間、何年か何十年か、或いは何百年かも解らないほど食事を―人の肉を口にしていないからこそ、扉を開けて中に入るまで貴女が在室だと気付かなかったのだろうか。ともかく、久しくエネルギー補給をしていない肉体が、大きな疲労に悲鳴を上げているのは事実。ふらついてしまいそうな感覚を抑え、地についている足の裏の感触を確かめるように両脚へ力を込めながら「私が、怖くないの?少しだけ此処にいても、あなたは平気…?」確かに見た目は弱々しい、単眼が潰れた今となっては自身を怪物たらしめる視覚的特徴も無い。けれど怪物は怪物、いくら弱っていても人一人殺害するなんて他愛もない事。それでも信頼してくれるのだろうか、そんな一縷の光を探し求めるかのように、見えない目で貴女をじっと見据えて)
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