執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>ルシアン
あーもうハイハイ分かったからっ。…お揃いの帽子、兄貴が見たら何て言うだろうね(ふくらはぎ辺りにやたらと風を感じる、何事かと首越しに振り返ればそこにはこれでもかと激しく揺れる尻尾。貴方は言うまでもなくこれに気が付いていたのだろう、この時ばかりはイヌ科の特徴が色濃い自身の種族を呪わざるを得ない。一時的に繋いだ手を離せば、ぶんぶん動く尻尾を隠すように、或いは抑えつけるように両手で抱き込みつつ、不意に浮かんだ疑問をぽつりと呟いては「……蝶々結びがいい、」これまたぽつんと置くように、ともすれば独り言と勘違いされそうなリクエストを提示しつつ、漸く収まりを見せつつある尻尾から手を離して、再度貴方と手を繋いで。「ギンハ?!あんた大丈夫だったの?」今こうして怪物である自身と話をしてくれているのだから、大丈夫云々はきっと愚問なのだろう。それでも、幼い人間を好んで食する狐の名前を聞いてしまえば、いかにも彼が好みそうな貴方の姿をまじまじと眺めて。「上等じゃない、手加減しないわよ」大人げなく飾り気のない言葉は、心の底からのもの。貴方と話していると、心の奥に凝り固まった邪気や毒気が陽だまりの下で溶かされていくようだ。歩くこと十数分、いくつ角を曲がって階段を通過したか数え切れなくなる頃、庭園に繋がるガラス戸と同じような意匠の扉が前方に現れて。ギィと音を立ててそれを潜り抜ければ、まず鼻腔を擽るのは濃厚なフルーツの香り。体感気温は屋敷の中より気持ち温かく感じられ、人間界では同じ場所に共存することなどありえない果物の樹が立ち並び、熟れた果実が芳醇な香りを放って「とうちゃーく!文句も言わず偉かったじゃない、ここが自慢の果樹園よっ」貴方と手を繋いだまま、声を張り上げては両腕を天に突き上げ万歳を。あるのは人間界の樹だけではない、見た事のないフルーツを生らせた奇抜な色の魔界の木々も散見されて)
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