執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>ラクシュエリ
無から有を生み出すことも出来るのか…本当に、すごい。(差し出された一輪の花を前に興奮で微かに上擦る声。今まで目にした人知を超えた力はあくまで何かに干渉したものであった。此方の体の自由を奪ったり、怪我を治癒させたり、あるいは今夜の訪問のように術者自身に作用する力。今、少女の華奢な手の内に存在する砂糖菓子のように白い花弁は、種も土も水も無い場所から、紛れもなく彼女によって産み落とされたものである。そんな馬鹿なと歓喜に震える体、ぞくぞくと背筋を走るこの感覚を何と呼べばいいのだろうか。彼を、彼らを神たらしめる理由が知らぬ間に積み重なっていく。開け放たれた窓から入り込んだ涼やかな夜風が、穢れのないイベリスを揺らす「ありがとう」十字架を手放した右手で、恭しく丁寧に可憐な花を受け取って、自らの口元に近付ける。すう、と浅く息を吸い込めば、瑞々しい草花の青く甘い香りが肺に落ちる。久しく感じることのなかった外の空気に触れたような気がして、表情を和らげながら花を遠ざけ「そうだな。読み聞かせや、子守歌なら得意だから、その類なら」孤児院の子供たちと過ごす日常で磨かれた特技は大したアピールポイントにはならないだろうけど。言葉を紡ぎながら手元の花弁に触る、左手も添え、器用に茎を折り込んでしまえば小さな髪飾りの完成。小振りで愛らしいそれを、彼女の耳元に挿そうとそっと手を伸ばして。この屋敷に攫われた夜に出会った青年は勝手に触れる事を良しとしなかったから、彼女の機嫌をこれで損ねてしまったら後の祭りであるが。それでも艶やかな金糸に揺れる白に、群青の瞳をゆるりと細め)あとは、こういう感じの花遊びもできる。指輪を作ったりだとか、髪飾りを作ったり。―――やっぱり、駄目かな?
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