執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>ルシアン
……ホントに不思議ね、あんた達。まるで同族を見てるみたい(ぽつり、しみじみと呟いた言葉は心底をそっくりそのまま表したもので。姿形も生き方も、何もかもが全く違うのに、互いが互いを大切に想い合っていることが貴方の表情や言葉だけでひしひしと伝わってくる。怪物と人間、その隔たりを飛び越える翼でも持っているのだろうか、そんな錯覚さえ覚えるほど。背後から聞こえる物音には、自身の足元へじゃれついてくる仔犬を彷彿とさせ思わず頬が緩む。急に手を引かれれば「あ、コラ」と弾むような声が漏れるも、それに怒気の類は一切籠っておらず、掌を包む体温に満更でもない感想を隠せていなくて。目に飛び込む色彩は、黒薔薇に覆われたこの屋敷では久しく拝めていなかったもので、思わず眩しそうに双眸をぱちくりさせ。けれど数秒で得心がいったようににんまりと微笑んでは「兄貴が言ってた通り。あんたって絵が上手いのね」何度問い詰めても貴方の名前や部屋の場所を、彼から直接教えてもらえることは無かった。けれど、すごく良い奴なんだとか、絵が上手いだとか、断片的に得ていた情報の点と点が今まさに繋がって。感心するように部屋を見回せば、勧められるがままに椅子に腰かけ「君達、ってのはあたし達人狼の事?特別なことはしてないわよ、眠けりゃ寝るし遊びたけりゃ遊ぶし、お腹が空けば食べるし。」記憶を辿るように明後日の方向へ視線を向けながら、自身の生活を振り返り指折り数えてゆく。文末に何んとなしに添えた食に対する話題が、貴方の前では人一倍デリケートであることには未だに気付いてはいない様子であっけらかんと。ゆえに「あたしもジェイドも、歯応えのあるものが好きかな。人間の世界には無いフルーツがあるんだけど、ほんとにちっちゃい頃はあたしと兄貴で取り合ってたし」好物、と聞いて自身の頭に真っ先に思い浮かぶのは人肉。けれど今は自身だけの話をしているのではなく、人狼の彼も加味して伝えてあげなくてはならない。無意識の気遣いから、血生臭い返答は奇跡的に回避し、結果思い出話に繋がれば懐かしそうに頬を綻ばせて「あとね、あたしは雷が嫌い。眩しいし煩いし――あ、そうだ。…ねえルシアン、ここだけの秘密って言ったら約束出来る?」先程の穏やかな表情から豹変、嫌いなものを思い浮かべれば露骨に表情を歪め、うげろ、とばかりに舌先を尖がらせて。次にジェイドの嫌いなもの、と思いを馳せるも、元より人に弱みを見せない彼の苦手には流石に知識が少なく。けれどついにある一点だけに思い至れば、悪戯っぽい笑みを口許に浮かべて人差し指を唇に添えつつ、ひそひそ話をするように声を潜めて「……兄貴ね、掃除機が苦手なの。今じゃ上手く隠してるけど、ちっちゃい頃はそりゃあ鳴いて嫌がってたのよ!」話している内に笑いが堪えきれず、言い終わるが早いかプハハと漏れ出すように吐息混じりの笑いを)
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