執事長 2019-05-03 19:58:05 |
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>シャルロット
ハッ──嬉しい、ね……はは、参っちゃうよね(吐き出すような短い笑い声は殆ど自嘲、この状況で笑うなど怪物だって疑問符を浮かべるようなおかしな事なのに、“私も”と共感を示されてさえ違うとは決して言えないのだから自分はやはりどうかしている。一瞬、相手の問いかけが何を指しているのか分からず、少なくとも名前を聞かれているのではないとは分かるがと早くは回らない頭を働かせれば大変間接的にではあるがこの場にもう一人いるといえば歯型の主、何故そんな事を聞かれるのかなど検討もつかず、目についたから気になっただけと思えば多少は納得もする。「──っあ゛、あ゛……っ」頭ではゾンビの名前を言ったつもりだったが喉から出てくるのはカエルの潰れたような濁音。首に噛みついたのは甘噛みだったのだと再認識するほど、これまで経験したどんな痛みも塗り替える強烈な痛みで、肉を削ぐどころかたったの一噛みで骨まで持っていかれたのを点滅し涙で歪む視界よりも湿った音に混ざって硬いものを噛み砕く咀嚼音で耳から脳で理解する。痛みと取り返しのつかない絶望に膝が折れやや前傾姿勢になれば余計に差し出すようで、実際、逃げたしたい気持ちを留まらせるほどの歓喜さと幸福のアドレナリンが脳みそを支配しているのだ。夥しく垂れ流れる鮮やかに赤黒い血液のびちゃびちゃした音と遠く聞こえる自分の唸り声、逆に耳元で聞こえる荒い息遣いと血液の巡る音。その合間においしい、と聞こえればその言葉を何度も脳内で繰り返し「おいしい、おいしい、おいしい……」いつの間にか唸り声はぶつぶつとした呟きに変わって、指を貪られるたび鋭く濁った唸りを上げてもぶつぶつと続け、ほんの数秒前には当たり前にあった五本がなくなってしまえばだらだらと流れていた涙がはたと止まり「……は、あは……そ、そんなに美味しいの……? はは、はは……つまみ食い、アッシュに、させてあげれば良かったな……」泣き腫らした顔で笑うのはさぞ醜い事だろう、気が違ったようで意識のはっきりしたまま動かそうと思っても動かない指先を動かそうともぞもぞと手の平を蠢かせて)
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