執事長 2019-05-03 19:58:05 |
通報 |
>レナード
肝に銘じておくよ。(自分がここに連れて来られた理由は分からないままだが、己に取っての彼の存在意義は少しだけ形を変えた。それが良かったのか悪かったのかは自分にも、神にも分からないだろう。溺れる者は藁をも掴む。まさにその通りだ。残酷で、気紛れで、優美なバケモノを神と見なした男は、彼の紡ぐ言葉に表情を和らげ「君が言うなら、そうなのかもしれないな」掴まれた手首の行方は形の良い口元。口を開くたびに白い牙が見え隠れするその場所。示された代償に対して取り乱すでも慌てるでもなく、当然の事と感受しよう。肌に吐息が触れ、鋭利なそれの先端が届いた。そうして、つぷり、と薄い肉を裂き深々と沈み込んでいく感触に詰まった息を漏らしながら眉根を顰める表情は痛みを堪える様でいて、快楽を堪える様にもよく似ていた。手首が心臓になったのではないかと馬鹿げた想像が脳裏を過ぎるくらい、傷口が熱く、脈打っている。腕を引きたいが、今動かしたら苦痛が増えるだけ。熱に浮かされた頭でもそれくらいはかろうじて分かる。捕われたままの右手はそのままに、空いた左手で捕食者の前髪をくしゃりと柔らかく撫でやって「―――もう、いいだろ」此方を見据える真紅の瞳を覗きながら、気が済んだかと群青の虹彩を緩めて)…君にまっすぐ見つめれると火傷をしそうだ。
トピック検索 |