マスカレイド 2019-04-25 21:57:43 |
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{………向かうか。俺は大丈夫だぞ}
喜多川祐介はソファから立ち上がる。
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「これよー、ホントに綺麗になんのか?」
金髪は少し輝きを取り戻してきた宝石を
磨きながら文句を垂れる。
『…環だろ、磨くと言い出したのは』
「確かにそうだけどよー、
汚すぎるぜ、これ。俺んちでもこんなの
見たことねーよ」
『…宝石の種類は?』
理知的な少年は問う。
「ピジョンブラッド・ルビーのデカいのが
真ん中に一個、周りにピンクサファイアと
ヒート加工した最高品質のアメジスト。
指輪自体はプラチナ。こりゃ相当高いな。
もう、価値がどれだけか分かんねーよ」
金髪は一般人では出ないような言葉を
さらさらと述べる。
金髪の家は有名ジュエリーショップ。
両親同様、金髪も宝石を見る目は確かだ。
《…夏希様のお祖父様の形見だと、
聞いたことがありますわ》
「あー、そりゃあじいさんの代から相当
金持ちだったんだろうな。こんなの、
天下の雛月ホールディングス社長令嬢・
綾乃でも躊躇うレベルの金額だぜ?」
《そんなにするのですか?》
「おう。ルビーの品質がピジョンブラッドで
他の宝石もこのサイズなら…軽く
見積もってもこの指輪、100万は下らねーな」
黒髪は目を丸くする。
《まあ、そんなに…価値のあるものだ、とは
伺っていましたけれど…》
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