Now saving... 2019-04-17 23:32:24 |
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ここは渓流と呼ばれるフィールドらしく拠点のユクモ村から一番近い。
気候は安定しておりホットドリンクやクーラードリンクといった体温を調節するアイテムもいらないため初心者ハンター御用達のフィールどとしても名高い。
一方で未だ生態が掴めていない牙竜種の目撃例が最近になって後を絶たないためハンターズギルドの面々も気が気ではなかった。
「くっそー。あと3本が見つからない…」
こういうときアイルーなんかが居たら楽なのかなと愚痴をこぼしつつ散策を続けるユガ。せっかくハンターに成れたのに初めての仕事がキノコ探しとは半ば肩を落としているのが実は本心だったりするのだ。
しばらく散策を続けていると小川から少し離れたところにある森林の中にユガは居た。森林の方にはまだ近づかない方が良いとギルド本部にも言われていた気がするが寧ろ少し危険くらいの方がハンターとしての仕事を全うしているような気がしていた。
森林の中はあまり日光が届かずジメジメしていた。朽ち木やコケの匂いを感じながら森林の中を彷徨っていると視線の先に大きなハチの巣があるのが分かった。
「ッ…!?」
だが、ユガが驚いたのは大きなハチの巣を見つけた事ではなく、その近くに沢山生えていた特産キノコでも無かった。
「デカい熊…ッ?」
視線の先に居たのは巨大な熊だった。全長は5メートル台と言ったところか。見たことも無い毛並みで全体的に青みがかっており両腕はもはや生物らしからぬ金属のような装甲を纏っていた。
巨大な青い熊はこちらには気づいていないのか大きなハチの巣に食らいついている。
「(なんだよアレ…。あんなのどうやって相手すれば…。)」
ユガは全身に嫌な汗が流れているのが分かった。直ぐにでも逃げ出したいと頭の中では分かっているのに、その足はまるで地面に縫い付けられたかのように動かなかった。人間は本当に恐いものと対面した時こうも動けなくなるものかと思い知らされた。
四肢の動かし方を忘れてしまったような錯覚を振り払いつつ、とにかく冷静に目の前で起こっていることを分析することにする。
「(と、とにかく奴はまだ俺の存在に気づいてない…!音を立てないようにゆっくり距離を取れば…っ!)」
視線を巨大な青い熊から離さず、そのまま後ろへ下がる格好で距離を取り始めるユガ。
が、
バキッ!と足が何かを踏んだ。
それは何処にでも落ちているような少し太い枯れ枝。ユガの体重がかかったことで折れた音だった。そしてその音は巨大な青い熊がこちらへ気づくには十分すぎるものだった。
「(まずい…ッ!!)」
巨大な青い熊が涎を垂らしながらこちらを睨みつけてくる。
直ぐにでも逃げようかと思ったが、あの視線を無視して背を向ける事なんてできなかった。
そうこうしている間にも巨大な青い熊は二足歩行に体制を変え両手で万歳するようなポーズをとると巨大な口を開けた。
咆哮。
獣の雄たけびというのは、ここまで人間を震え上がらせ戦意喪失させるものなのか。もはや耳を塞ぐことも忘れその場に立ち尽くしてしまうユガ。自分がハンターであることなど忘れてしまっていた。
巨大な青い熊は再び四足歩行の態勢に戻ると勢いよくこちらへ向かって走って来る。
「(ぶ、武器をか、構えて…それで…えっと…)」
無理やり頭を働かせて訓練所で習ったことを振り返るが、やはり考えがまとまらない。
もう巨大な青い熊は目の鼻の先まで迫ってきていて。
そして――。
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