匿名 2019-04-16 21:05:25 |
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付いて、行かない訳がないでしょ。
(馬鹿な人。それでいて、可哀想な人。彼の言葉を耳にして抱いたのはそんな感想。選ぶ立場にあるのは彼だというのに、一回りも年の離れた小娘の共感なんざ『分かった風な事を』と一蹴してもいいというのに。誑かされている可能性すら見ていない様な、何処までも低姿勢で優しすぎる言葉達には、いっそ言葉を掛けられた側に彼の傷を連想させずにはいられない。貼り付けた笑顔を壊すなんて想定すらしていなかったというのに、思わず眉を下げて歪んだ笑みを浮かべれば、絞り出したのは当たり前だと言わんばかりの承諾で。まあどうしたって、己も行く宛などないのだから最初から選択肢など一つしか有り得ないが。そうして、髪を撫ぜる大きな手にすり、と頬を擦り寄せては、冷えた感触に身を震わせる。だがそれも当然か、冷雨に晒された互いの身体はとっくに体温を失っているのだから。事情も、名前すらも知らない相手の冷たさだけを知った今、それを温めたいと思ったのは間違っても気紛れなんかじゃない。髪を撫ぜていた手から抜け出す様にするりと身を捩れば、相手の無防備な唇に不意打ちで自分のものを重ねて。すぐさま身を引いたその行為はまさしく奪う、という形が正しいだろう。悪びれもしなければ高揚も見せず、ただ挨拶をしたかのような自然体で立ち上がれば、「此処にいても、冷えてくばっかりよおじさん。ほら、受け入れてくれるんでしょう?」そう言って右手を差し出そうか。早く貴方の部屋に連れて帰って、言外にそう仄めかしては"ね?"と小首を捻って。)
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