ヤンデレ。 2019-04-16 16:33:51 |
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(彼の口から紡がれた言葉は何処か哀切を含んでいるように思えて、きゅっと胸の奥が締め付けられる。仄かに憂いを帯びた眼差しは真に迫っており、まるで彼自身が吸血鬼であるかのよう。目の前の男は果たして何者なんだろうか…謎は深まるばかりでこの距離感がじれったい。そして、気づいたときには彼の後頭部へ手を伸ばしていた。シンパシーだとか愛おしさだとか様々な感情が折り重なり、艶やかな後ろ髪を撫でる手のひらは子供をあやすかのように優しく柔らかなものになる。──その言葉は吸血鬼の心情を推察したものなのか、それとも彼自身が抱いている二律背反的な欲望がぽとりと零れ落ちたのか。問い掛けることはせず黙したまま、時折、親指の腹で耳の輪郭をそろりと撫ぜて。先程とは打って変わり、不服そうな表情へ移ろう様を瞳に映しては、ぷ、と軽く吹き出し「そんなツラには見えないけど。…なんて。ロアは酔狂なお兄さんだから守備範囲も広いのかな。老若男女問わず、ゆりかごから墓場まで愛せちゃう系?」とゆるり首を傾げて見せ。その仕草は傍から見れば余裕を感じさせることだろう。しかし内実は真逆、彼と自分以外の人物が睦み合う光景を脳裏に思い描いては胃の腑がジリジリと焼き尽くされそうな程ドス黒い嫉妬の念がせり上がる。そんな折に、まるで己を試すような問いを向けられればいとも容易く理性の箍が外れ、堰き止めていた劣情が奔流となって溢れ出し。撫でていた後頭部を半ば強引に引き寄せては互いの唇が触れ合うか触れ合わぬかのギリギリまで距離を詰め。──吸血鬼に血を吸われた奴は、そいつも吸血鬼になっちゃうんだってさ。DVDのジャケットを一瞥して囁く。「俺が吸血鬼だったら…その首筋を掻っ喰らって、アンタを俺のものにする。嬲って、貪り尽くして、イチから躾けてあげるよ。お兄さん」睫毛を伏せて、ゆっくりと口付けを供すれば彼の薄い唇を割り開くようにブランデー漬けの舌を這わせて。)
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