ヤンデレ。 2019-04-16 16:33:51 |
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──うん。よろしく、ロア。
(名とは存在を縛るもの。そして彼は享受した。己の唇から零れた名を。まるで美しい獣に首輪を嵌めるかのような感覚、心の奥底が仄暗い悦楽で満たされ自然と口許が綻ぶ。捕らえた彼の手首は此方より幾分かひんやりとしているように感じ、肌の滑らかさも相俟ってか作り物めいた印象を受ける。改めて手を重ね緩く握れば、何か腹に一物抱えていそうな彼の笑みを真似つつ「ッはは。自ら引っ掛かりに来るなんてお兄さん相当良い趣味してんね。ますます気に入ったよ。この出逢いに乾杯!ってことで、早く行こう」と声を弾ませ。何処か名残惜しげに、熱の余韻を愛おしむようにゆるりと手を解いては、マスターへ「ご馳走さま」と告げて会計を済ませたのち彼と共に店を後にして。)
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(BARから徒歩15分程の場所にあるマンションの一室。ポケットから鍵を取り出し扉を開けると明かりを点けて彼を招き入れる。広めのワンルームには白と黒を基調にしたモノトーンな家具が据えられており、壁には幾つもの写真が飾られている。そこに写っているのは美しい色彩の空や、生い茂る緑、澄み渡る水辺、荘厳な趣きを醸し出す建築物など、ほとんどは海外で撮影された景色で。部屋の中央に位置するローテーブルには吸い殻の残っていない真っさらな灰皿と、この部屋に訪れた際に誰かが忘れて行ったホラー映画のDVD『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』が置いてあり。キッチンでグラスを用意しつつ二人掛けのソファーを指差しては「ロア、そこ座ってて」と促し、たしか頂き物のブランデーがあったはず…と様々な酒が並んである棚に視線を巡らせ。)
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