ここで幸せに (〆)

（遠くで鐘が鳴っている。朝6時を告げる音だ。私はガバッッと起き上がり、部屋の兄弟たちに声をかける。「みんな起きてー！」

小さい子の着替えを手伝ってやり、自身も身支度を整え賑やかな廊下へ。兄弟たちと戯れ合いながら、ママのいる食堂へ向かう
――――――…あれ？ママって誰だっけ？）

………
（フッと目を覚ますと見慣れた天井と聞き慣れた目覚ましの音。なぁんだ夢か、と欠伸をして時計を宥め、ゆっくり起き上がる。私には兄弟なんていないし集団生活もしたことがない。親のことも“ママ”なんて呼んだことないのに変な夢。洗面所へ行き、もやもやした気分を流すように顔をバシャバシャ洗い、ふわふわのタオルに顔を埋める。顔を上げれば鏡に映る自分と目が合った。今日は、先日入ったばかりのテニスサークルの、新歓コンパがあるのだった。そういえば出来たばかりの友人たちが雑誌を開きながら、メイク気合い入れるだとか、服どうしようだとか真剣な顔で話し合っていたのを思い出す。よし、よく分からないけど私も気合い入れていこ！髪の毛を手櫛で整え、満足げに頷く。うん、次は服だ。気合い入れた服ってなんだろう？パジャマ姿のまましばらく首を傾げていると、インターホンが部屋に鳴り響いた。そうだ、ノーマンに聞いてみよう！彼も同じサークルに入ったのだった。パッと笑顔になって玄関へ向かい、勢いよくドアを開け）

ノーマンおはよ！ごめん、まだ支度終わってなくて…新歓コンパにぴったりの服、ええっと…“気合いのはいった服”を選んでたんだけど、どういうのがそうなのか分からなくって困ってたの！…あれ？でもノーマンはいつもと服、変わらないね