2019-03-28 21:38:49 |
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(__何故、私には個性が無いのだろう。
ずっと疑問に思って居た。この世界には沢山の"個性を持つ者達"が居て、沢山の"ヒーロー"が居る。沢山の人の役に立つ、というのは悪いことでは無いし寧ろ良いことだ。自らを危険に晒してでも人を助けるヒーローに、小さい頃から憧れて居た。中々個性が出なくて、医者に行くまでは何度も何度もヒーロー名を考えたり、友達と一緒に自分の個性を考えたりもした。…医者からの"無個性"宣告を受けても諦めずに個性を出そうと努力をしてきた。けれど、そんな努力は無駄になってしまった。そうは思いたくは無いけれど、自分には才能がない。そんな風に悩んだこともあったけれど、今となってはいい思い出だ。沢山勉強して、"ヒーロー"以外の方法で人の役に立つ。ヒーローへの憧れを捨てた訳ではないけれど、試行錯誤しながら人の役に立つのが今の夢。高校の制服を着て、長い髪をふわりと揺らしながら歩くのは賑やかな街並み。向かう先は決めて居ない、ほんのショッピングのつもりで歩いて居た。息を吐きながら周りをキョロ、と気にしてみればヒーローごっこをしている子供達の姿が垣間見えて。笑みを浮かべながらそれを見ていれば。)
「きゃああああっ!!」
(大きな悲鳴。その音にビクッと肩を震わせる。何事かと振り返れば、先程まで歩いて居た筈の道沿いの店が火事になって居て。火は乗り移り、多くの建物を侵していく。頭が上手く整理出来ない、近くにヒーローが居る気配がない、此方に向かってくるのは、強盗なのだろうか、大きな鞄を持った大きな男3人組。男達は悲鳴をあげる人間からも金を毟り取るつもりなのだろうか、何度も色んな人に攻撃をしている。大きな怒声を上げながら近付いてくる3人組に対応することが出来ず、ただ向かってくるのを待つ状態に陥って。腰が引けて、思わず尻餅をつく。周りは炎に包まれ、向かってくる男に攻撃をすることも出来ず、ただただ震えるばかりで。)
「__ッ…だ、れか…誰か、助け…て…ッ」
(必死に漏らした声。けれどそれが誰かに届く筈もなくて、周りの人は皆踵を返して逃げていく。真っ直ぐ此方に向かってくる男達。血に飢えた獣のようなその瞳とバッチリ目が合ってしまい、小さく「ヒッ」と悲鳴を上げる。ヒーローは居ない、助けてくれる人も居ない、けれど諦めたくもない、でも脚は動かない、そんな状況ではどうすることも出来なくて。唇を噛めば鉄分の味が口内に広がる。もうダメなのだろうか、と半ば諦めたかのようにぎゅっと目を閉じて。)
( / 僭越ながら炉留投下させて頂きました。
誤字脱字等あると思いますが、宜しくお願い致します)
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