犬と兎 【〆】

俺はいつも市民の事を考えて働いてるぜィ。但しチャイナ、テメーは論外だけどな。( 眠りにつくのを阻まれ、チッ、と軽く舌打ちをしつつ己に向けられた傘を押して顔の側からずらし。「休憩」を諦めアイマスクを外すと、相手の正論に態と煽るような形で憎まれ口を返し。 )

フン、口だけは達者アルナ。生意気な口きいてんじゃねーぞ腐れ外道。( ずらされた番傘はそのまま離さず、そして目線も逸らさずに赤い二対を睨め。売り言葉に買い言葉、とでも言うべきか、真白な肌にびきりと青筋立てながら、煽られればそれに乗っかる様に憎まれ口を叩き。 )

生意気なのはそっちだクソガキ。年上に対する敬意ってモンをちったぁ見せやがれィ。( 怯む様子なく、むしろ相手が乗ってくる事は予想内。浮かんで目立つ青筋にちら、と目をやってはにやりと意地悪い笑みを浮かべて依然煽り口調はなりを潜めず。 )

つーかお前こそ真っ昼間からうろうろしてんじゃねェや。万事屋さんはお暇なんですね~。( 自分が思う最高に憎たらしい笑顔を張り付けて、咎めるというよりは揶揄うように。そうして話すうちに喉に乾きを覚え始め、残っていたジュースを飲もうと横に置いた缶に手を伸ばそうとし。 )

お前みたいな奴相手に敬意もクソもないアル。( 端正な顔が意地悪く歪む様を苛立った表情で見詰めつつ、はん、と鼻を一つ鳴らすと同じ調子で再度返し。 然し一転、揶揄いを含んだ相手の言葉に深刻な顔で今の現状をつらつらと述べ。眉尻を下げ落胆した様子は見せながらも、目敏く相手の掌が缶ジュースに伸びるのを見ると、飲ませまいと話途中に番傘で缶を打ち。 )
おうヨ、万事屋は今金欠ネ、なんでも依頼が全然来ないとかって銀ちゃんが嘆いてたアル。だから最近は三日連続卵かけご飯だし、缶ジュース一本買う余裕すらないアル。…あ、手が滑った。

そーかィ。んじゃ俺は敬う事を知らねェまま成長しちまったチャイナが、社会に馴染めず路頭に迷うのを楽しみにしとくぜィ。このまま万事屋が暇続きで食費の掛かる誰かさんがクビでも切られりゃ、尚更行く末は──あ、てめっ...！( ああ言えばこう言う、お互いのそんな言い合いにこのまま終わりは来ないのではないか。そう思ったのも束の間、1発の銃声が、数cm先の缶を跳ね飛ばしたのと同時に此方の口を止め。然し勢い付いた調子は止まらず、落ちた缶から流れる液体を指し示しては今日1番に黒い笑みを零しながら言い放ち。 )

ジュースも買えねェチャイナに俺からのプレゼントでィ。ほら飲めよ。