10歳にも満たない少女は、親からも捨てられ村人からは迫害を受けて生きてきた。それは人とは掛け離れた容姿、銀色の髪と緋色の瞳をしていたからである。緋色は悪魔の象徴とされている世界で、少女の瞳は人々にとって悪魔の降臨を予期させた。
日常的に殴る蹴る罵詈雑言を浴びせられていた少女は理不尽な毎日に涙するしかなかった。
そんな少女の前に現れたのは1匹の小さな獣。親とはぐれたのかピィピィと鳴いていたのを少女は見つけたのだ。
「君も一人ぼっちなの?私と一緒ね……」
少女は獣を抱きしめその温もりにひたすら涙を流した。
20年後。
ゼレーネ歴234年。世界は恐怖に怯えていた。
疫病のように一人また一人と倒れ、しかし死ぬのではなく目を覚ました者は必ず記憶を失っていた。自分の過去もそして新たな記憶を蓄積すら出来なくなり、生きる屍と化す。
原因不明の病と人々は恐れたが、不思議と記憶を失う前には1人の女と獣の姿が目撃されていた。
「ねぇ、レヴィー。きっとこれで幸せな世界になるよね?」
緋色の瞳と銀色の髪をした女は、自分より大きな獣に身体を預けて静かに告げた。
(/レス禁)