蟲 2019-03-12 00:10:57 |
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>駒宮
【籠女】(ゆるんで少しだけ開いた唇と若い女のしたたるような匂い、嬌然と笑った顔は檻のような蟲卵から自由の身となれた事を霧が晴れたように喜んでいる現れで。きゃらきゃら、くすくす、綻ぶように笑い声を交えながら覗き込む男の顔を記憶するように確りと見つめ「籠女は天女じゃないわあ。蝶々だもの」変な父さま、付け足しの一言は独り言の如く吐息と共に小さく落とされて。蟲卵より姿を現せば背に広がる大きな羽を震わせて優雅な動きではたはた、と。愛されることが当然なのだと信じて疑わないナルシズム、度の過ぎた自己愛は今まさに自らを放置する男の行動が信じられないとその姿を後追いし。男の意識が隣に並ぶ蟲けらに向いたと知ればうんざりするように欠伸を漏らして辟易を。伸ばした人差し指を自らのぽってりと膨れた唇に宛がうと「父さま、父さま、そぉんな汚い蟲よりも私を愛しなさいな。じゃないと私、きっと怒っちゃうわ。___だぁってね、お腹が空いてて機嫌が悪いの」蟲卵より出たばかりの身体が空腹を訴える。嘘はついていない。___ぺろり、生唾の光る舌がうねるように唇を撫でた。「月夜、あなたもあなた。陰気な顔をいつまでも晒すつもり?醜い顔が際立って見てるだけで気分が悪くなるじゃない」腹が減った、腹が立つ、愚かな片割れが一緒だと?ああ!気分が悪い。飢えが本性を暴き凶暴性に拍車を掛けるのか、将又、蟲としての本能か。薄い腹を撫でながら今一度「父さま。そぉんな醜い蟲なんか放っておきなさいな。……そんな事より、私を愛して。籠女は可愛いねって、ご馳走をするべきだわ」大きな眼はぎょろりと開かれる。情緒不安定な脆い平静が狂気に変わると恐喝でもするように脅しの言葉を真正面より男に綴り)
【月夜】(殺していた筈の息は酸素不足に耐えられずにヒュー、ヒュー、と風船が空気を漏らすのに似た音を立てる。陰気な蟲には広大な世界は負担が大きく耐え切れないと、うつろ眼が右に左に泳ぐばかり。焦点の合わない目が茫然と捉えたのは人の形をしたその姿、遠巻きに聞こえるような声は未だはっきりとその意味までを理解することが出来ずにいる。冷や水を掛けられたように空ろだった意識が戻ったのは、他ならない籠女の声で。少しずつ、少しずつ、震える身体はカチカチと奥歯が当たる程度の小刻みに変化し、蟲卵の中では知ることの無かった暖かさに包まれていると気付く。同時に、孵ったばかりにも関わらず汚い色をした羽が申し訳無いと存在を主張し広がれば、唇の動きだけでぽそぽそと繰り返されるのは"ごめんなさい"の謝罪の言葉で。産まれてしまってごめんなさい、生きてしまってごめんなさい、面倒を掛けてごめんなさい、全てに掛かるその言葉を陸地の魚の如くパクパクと唇を動かして何度も繰り返し。遠くに聞こえた犬の声に首を伸ばして顔を上げると、飢えから来る生唾を喉仏を上下させつつごくりと飲み込んだ。ドクン、ドクン、興奮する心臓の動きは漸く生き物を食べられると本能的に期待しているからか、抑え込むべく自らの手の平に歯を立てて痛みで理性を戻しつつ「食べても許される生き物は、――生きた肉は、」死にたいと願っていたにも関わらず無様にも食事をとり死ぬことを恐れている。死にたがりの死にぞこないは、必死にも声を絞り出すと「でないと、貴方を食べてしまいそう」自らを噛んでまで抑え込むのは、こんなろくでなしの蟲卵を拾ってくれた御主人様に手は出したくないと言う一存ゆえに。湿った眼差しが前髪の隙間から覗き男を見つめ)
(/返信形式は今の形で大丈夫です。後々は必ずしも療法と同時に交流しなければならない訳では無い為、籠女だけ月夜だけと何方でも大丈夫です。場面に付きましては満月の夜だけは蟲としての本能が強まることと、条件を満たし戻さない限りはより蟲に近い見目であると言うだけですので満月以外の夜、日中と問わずに可能です。その際には普段よりも幾分か落ち着いた蟲での交流が可能となっております…!)
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