名無しさん 2019-03-11 07:31:16 |
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「大丈夫です。こっちもお見通だったなんて、お見事…ん、おじさんには敵わないなあ」
(うっと鳴りそうなお腹が遠慮なく食べたとしても支払いに関してはそうもいかないと割勘を申し出るため口を開きかけるも呼び止められ注文を取る態勢にある店員を挟んだ状況で聞き取りの妨害をしてはいけないといった配慮と、頼もうと決めていた品が言い当てられるように叔父から次々に注文されていることへの驚きを店員に変に悟られないよう開口間際の口をスーンと一旦閉じることに決めて、復唱される注文を聞きながら自分はそんなに判りやすかっただろうか?少しだけ熱くなる頬を内側から冷やすように水を一口含んでは飲み込んでいく。叔父は人に対しての洞察力が鋭くこうしたところが特に名探偵なのだと、幼い頃に抱いていた3言えば10伝わる不思議へ大人になって理解が追い付くようで。今の自分の全てが明るみになるのは困ってしまうが、メニュー表と睨めっ子している間に向けられていたであろう視線を思えばこみ上げてくるのは嬉しさしかなく、店員が去った後の言葉に大丈夫と頷き感服の言葉を述べて、先程の名推理がピースで締め括られれば可愛過ぎる名探偵にひとつ咳の振りをした息を飲み込んで完敗だと緩くさげた眉で笑みを零し)
「昔みたいに……。さすがに子供の時みたいに病院勤務時や往診時におじさんの後付いてまわるのは難しいですよ? こちらも仕事がありますからお互いに空いた時間で…家に来てもらったりおじさんの家に遊びに行ったり、でしょうか? あとは此処なり何処かで─あ、お酒も一緒に楽しめますし割勘だって大丈夫です。俺、今年で20歳になったんですよ。……昔より、おじさんの時間を貰うことになるかも知れないですけど、それでも良ければ、喜んで。」
(場所が近くだから直ぐに会えるというのは確証性が薄い、これは先程の叔父の言葉に心の内で返してしまったことで。遠く離れていても会おうと思えば何時でも会いに行けたのにそれをしなかった、近場でも今日こうして会えなければ……そんな事を思えばこそ会うためには距離よりも意思が大切になるのだとも。不安定さを否なめない自分は今日夕方に叔父と離れて明日会いに行けるだろうか?叔父が近場というだけの偶然性に頼る程度の会いたい意思なら明日以降、会うこともないのだろうか?等と、後ろ向きな思考が心の底で漂っていた中で、叔父が目の前で提案した"話し相手"は偶然よりももっと具体的な意思に感じる事が出来た。僅かに見開いた瞳で"昔みたいに"と叔父の言葉をゆっくりと復唱すれば靄がまたひとつ晴れていくようで、気が付けば、感化されたように更なる具体的な話を、明日の自分が逃げ出さぬようにと意思を固めながら珍しくわたわたとした口調で懸命に話を始めている自分がいて。会えそうな場所の提示はキリがなく先程飲み込んでいた割勘の話を時の流れの報告と共にチラチラとしてしまうあたりで着地地点を見失い掛けてることに気が付き悩むように口下に当てていた片手を離して言葉を仕切らせ、様々な場所で昔のように叔父の話し相手となる未来の想像は楽しくもあってプライベートの時間を奪ってしまう事だけは気掛かりであるけれど、会える時はいつでも長く話していたいと思うのだろう、それが叔父も同じであれば良いなと目蓋を伏せて願った後に嬉しさが滲んだ口元を緩ませる。
これだけでも気持ちがいっぱいだったのに、一息付けようと置かれたコーヒーカップを持ち上げ店内に漂っていた同じ深い豆の匂いで鼻孔を満たそうとした直後、叔父からの嬉しい追加の連絡先交換の声があるものだからケホリケホリと息を咽たまま心配ご無用と片手を軽くあげて少々涙目となった顔をコクコク肯定に何度か頷かせては、机へ戻し置いた珈琲と交代するようにポケットから慌ててスマホを取り出して叔父のスマホと通信を取るようにして傾け合わせていき)
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