名無しさん 2019-03-11 07:31:16 |
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「──確かに、何処でも構わないって言いましたけど」
(県を跨いで車から運んできた私物が詰められた段ボール数箱を玄関先に重ねたまま放置している本日より新居となるマンション自室方面を外から眺め見上げれば住居決定から何度目か解らない後悔の滲んだ声が零れて。SNSで人気を博し大盛況で終わった個展を期に順風満帆に仕事が舞い込みめでたく自宅営業から事務所を持つまでとなった凄腕フリーランスフォトグラファー、の、見習い助手である己の家は凄腕さんとのシェア住宅であり事務所の完成報告と共にシェア住宅解約のお知らせを受け、続いては事務所から近い住宅の選択権を与えられる上げて下げて上げての流れに困憊し"落ち着ける場所なら何処でも"と考えを放棄をしたのが不味かったと、マンションに背を向けて思考を唸らせるが歩きだした足は迷うことなくスイスイと歩を進めていき。メモ一枚で案内された新築マンションの詳細な間取りは不明でも、靴先から続くいくつかの道が何処へ続き何があるのか知っている。あそこの道を進めば夕刻に吹奏楽部が奏でる楽器の音色がグラウンドに満ちる学校が、向こうを進んでいけば古き良き商店街が、どの道の先も提示した条件通りに落ち着ける場所ばかりで、むしろ)
「…………懐かし過ぎるんだよなあ」
(生まれ故郷の道中で呆ける日が来ようとは思いもしなかったが昔と変わらない風景がまた瞳の中に映り込んでくれば懐かしむよう瞼を伏せたのちに表情は柔らかいものへと戻っていき。数年前の記憶と照らし合わせながら静かに歩く故郷は楽しく浮かれた気持ちが1番に落ち着く場所へと行く先を誘導していくのだが、其所へと至る道の上で初めて記憶の中の映像が場所ではなく人の姿で蘇れば、ギクリと薄れていた後悔の念が足に絡み始め。この街にではない、あの人の─おじさんがいる街に帰ってきたのだ、そう認識を露にすれば完全に後悔に囚われた足は歩みを止めてしまっていて)
(/ 初回ゆえ長々となってしまい申し訳ございません。 また、おじさまの元へ辿り着けずとなってしまいましたが、きちんと病院を目指し足を進めて参りますのでご安心頂ければと思います。初回レス、こちらで問題ございませんでしょうか…? 返し難い点などありましたら遠慮なく申し付けて下さいませ…! )
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