店主 2019-02-12 09:40:32 |
通報 |
――いえ、お気になさらず。彼等は好奇心旺盛でね、見慣れぬ人間が来るとじっとはして居られない様で。……見えるのでしょう、この子達が。
( 具体的な本の題名が彼女の口から挙げられると、いよいよ居てもたっても居られなくなったのか嬉々とした様子で付喪神の霊力体が宙を舞う。呆れ混じりに小さく溜息を吐くと、流石に隣の相手も何か異変を感じ取っているようだった。もう少し驚かせない形で説明すべき所なのだが、ここで変に誤魔化しても後に面倒になるだけだ。此方がその力を知っている等とは到底思っていない彼女が傍から見れば不審とも取れる行動に対し謝罪するのを見て、軽く揶揄う調子で告げると、落ち着かなかった付喪神に人の形を取らせた。人ならざるもの、自分達とは明らかに違った様相で超然と現れた数人の神は、圧巻と言うに相応しいだろう。さて、相手の反応はどうだろうか、普通の感覚であれば驚きのまま逃げ帰られても文句は言えない状況だったが、そうなった場合にも力を持つものは必ずいつか惹かれあう。大抵の場合はもう一度此処に足を運ぶ事になるのを知っていたから、少々荒い紹介になった事について特別気掛かりは無かった。 )
そうですね……ここ数日は忙しさも有り、どうにも食事を疎かにしている節は有ります。そろそろ屋敷内の食料も買い出しに行かねばならないのですが、どうにも面倒で。
( 食事の事を問われ、そう言えば最後に胃に物を入れたのはいつだっただろうか、なんで思考を巡らせる。元々あまり食事に対する関心が薄い性質ではあるが、そこに多忙が重なると優先順位は下がる一方だった。碌に料理をしない店主を心配してご飯を作って持ってくる付喪神も居るが、そもそもこの数日に至っては帰宅するなり眠りに入ってしまうのだから手の施しようも無かったのだろう。根本、どれ程食料が残っている状態なのかも定かでは無かった。自身に無頓着が故の私生活におけるだらしなさは、この男の大きな欠点の一つと言えよう。 )
トピック検索 |