匿名さん 2019-02-10 22:59:03 |
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( 政府の役人が本丸へと訪れたのは数日前。政府から一方的に報せが届けられる事はあれどもこうして彼らが本丸へと足を運ぶことは珍しい。何処か物々しい雰囲気を纏いながら主の座する間へ近侍である歌仙兼定が案内する、そんな後ろ姿を眺めていた。──そうして数刻が経った頃、政府の役人が本丸を後にする後ろ姿を同じように縁側から眺めていれば普段の彼とは別人と言っても過言ではない程に表情を硬く、脂汗さえ滲ませた様子で 「 主が呼んでいるよ 」、と一言。只事では無いその様子に大人しく従ったその先で待っていたとばかりに口を開いた審神者は 「 とある本丸にて審神者が殺害された。じきに本丸は解体されるそうだ。そこで、彼らの処遇だが自刃や朽ちるまで放置と言うのは政府としても夢見が悪い。……彼らには二つの行き場がある。一つは他の本丸への移籍、もう一つは他所の審神者に刀解してもらうことだ。 」 歌仙も歌仙だが主の表情も硬い。それもそうだ、その様な雑事は本来なら政府が秘密裏に行うことであり何故この本丸に頼む必要があるのか。「 で、それを聞くだけでいいのかい? 」 その場に同席していた鶴丸が口を出す。それに対し審神者は青ざめ俺達に目を合わせないよう畳の目に視線を向けながら、「 表向きはそう、だが…──政府としては誰が手にかけたかは定かでは無いにしろ、審神者が刀に殺されたということはあってはならないこと。……早々に始末せよ、との事だ。 」 その言葉に息を飲んだのは誰だっただろうか。「 こんな事、君達に頼むべきではない事は重々承知の上だ。しかし──… 」 主は同胞を討たせる事に心を痛めている様子で先の言葉を紡げない。そんな主を見かねて歌仙兼定が口を開く。「 君達なら分かるだろう。ここで主が断れば主の立場が危うくなってしまう。だから、君達が呼ばれたんだ。──鶯丸、鶴丸国永、亀甲貞宗、小夜左文字、前田藤四郎、君達5振りにこの任務を頼みたい。部隊長は僕だ。心配せずとも同士討ちの罪は君達だけに負わせたりしないよ。 」 納得行かずとも近侍殿にそこまで言われて首を振る者は居らず、そうしてその場に居たひとりと六振りの刀のみが知る特殊任務が組まれた。
そして任務当日、一瞥した感じは己が顕現した本丸とは変わらない。木造の日本家屋だ。但し一つだけ違う所がある。…静かすぎるのだ。多くの刀が居た面影はなく閑散とした本丸へ前を歩く歌仙が門を潜る前に振り返り、「 警戒されては困る。彼らに話を通すまでは鶯丸と僕だけで行こう。もしかしたら僕らが今日ここへ来る事を彼らは知らされていないかもしれないからね。」 そう告げる歌仙の言葉に危ないのではないかと口にする者も居たが最終的には皆納得し、本丸の玄関口の傍に待機していることとなった。歌仙と目配せを一度きり行うと静かに戸を開け。すると音を聞き付けていたのか己が知る姿よりもずっと疲弊した様子の平野藤四郎の姿。歌仙が平野へと声を掛ける。 「 ──すまないね。貴殿らに政府より言伝があって訪れたのだけれど。少しいいかい? 」 ……さて、きちんと話しが通っていれば迎える言葉を、通っていないのであれば礼儀正しい平野の事だ。誰かに指示を仰ぐだろう。その人物が今この本丸を動かしている人物に違いない。縁の深い短刀を怖がらせないよう平常通りの笑みを象りながら様子を伺い )
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