匿名さん 2019-02-10 22:59:03 |
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( 平野の対応はやはり予想していた通り何の連絡も受けていなかったのだろう、困惑した様子隠せず少しばかり狼狽えながら客間へと案内される。最悪の場合は玄関口で審神者の代わりに仕切っている者に突っぱねられる事も予想していたが故に、思わず歌仙の方へ顔を向けてしまったが同じように感じていたのだろう、交わる視線に安堵の表れか歌仙が乾いた笑みを零し。流石に今を逃せば不味いのではないかと平野に一言断りを入れ、六振りで客間に腰を下ろしその場に待機する。指示を仰ぎに行くのだろう平野が客間から立ち去るのを見届け、気配が何一つ無くなった、その時。 「 あ、あの… 」 修行に出る前よりもずっと気配に敏感になった前田が安全を確認できたようで、口を開き。「 僕はここの皆様が…平野が主君を手に掛けるなんて考えられません。 」 同じ刀派、さらには縁の深い刀を手に掛けることに躊躇いを隠せない前田に、「 けれどそれがご主人様に下された命だよ。今更怖気付いたのかい 」 そう間髪入れず亀甲が問い掛け、唇を噛み締めながら首を縦にも横にも振れぬ状況に息を飲む前田と亀甲の間に入るようにして歌仙が前に出る。 「 やめないか、亀甲。──前田の言いたい事も充分に承知しているさ。だからこそ君達にはもう一つ頼みたい。……彼らは処分すべき刀なのか、その判断だ。 」 歌仙の頼みは政府より賜った任務に反する内容が故に、皆一様に歌仙の言葉の真意を探るように押し黙り。「 それは即ち審神者に問題があったと判断出来れば、二つの選択肢でも構わないということか 」 必ずしも刀剣の破壊が任務達成の条件では無いことに肩の荷が僅かに降りる。 「 そうなるね。もちろんこれは主が掛け合ってみると言うだけだからそれを当てにしてはならないよ。 」 己の問い掛けに返る言葉は解決とはならないものの、明らかに安心した様子の前田藤四郎が足音を捉えたのかハッと顔色を変え、小声で全員に6人分の足音が聞こえると告げるとすぐさま全員口を閉ざす。そしてついに開かれた襖。初めに見えたのは燃えるような紅色。演練で見た事がある、紛れもない──大包平だ。記憶の中の大包平に比べ憔悴した印象を受けるも、内から溢れる自信や芯の強さに思わず釘付けになってしまう。そんな己を感じてか咳払いを一度、そうして歌仙が話を切り出す。「 いきなり押しかけてしまってすまないね。ここから失礼するよ。…僕は歌仙兼定。貴殿らに政府からの言伝があってここまで来たんだ。どうか平野を叱るのはやめて欲しい。政府の使者として来た僕らに失礼がないように気遣ってのことだからね。 」 歌仙は言葉の途中で平野へ視線を向け再び大包平へと向き直り、ここから失礼する、その言葉通り歌仙含め自身達が決して座したまま立ち上がらないのは、あくまで政府の使者として来ているのであって相手の顔色を窺う必要が無いからだ。それどころか下手に出ることでデメリットしかないのである。そして畳み掛けるように歌仙が続けざまに、「 ──既に察していると思うのだけど、貴殿らの今後についてだ。貴殿らには今から刀解か別の本丸への讓渡、どちらが良いか決めてもらう。 」 張り詰めた空気が上皮を刺激するような錯覚を覚えながら、隣の歌仙が心を落ち着かせる為か大きく息を吸う気配を感じる。「 そこで、貴殿らに協力を願いたい。僕とここに控える鶯丸、鶴丸、亀甲、小夜、前田にそれぞれ一人ずつ着いてもらいたいんだ。全員で押しかけては言いたい事も言えないかもしれないからね。 」 真っ直ぐと大包平から視線を外さず告げる歌仙の言葉に含まれたのは果たして己含む特殊任務を行う全員だったのか、それとも彼ら本丸は既に自分の意見を述べることすら難しくなってしまっているのか、どちらとも取れる命令に近い頼みに耳を傾け。 )
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