上下関係（〆）　

えぇ、勿論ですよ。私めは観音坂様の従順なる僕ですから。
(正に期待通りの反応。上下関係を誇張するような口調と“命令”という何とも心揺さぶられる単語。我が儘などと簡単には形容出来ぬ様な、気持ちが良い程の猛々しさに思わず瞳を細めては受けて立つとばかりに返して。音を立てぬようにドアを閉めドアの直ぐ脇に待機させておいた軟らかな手触りのオーダーメイドの衣服を手に取り。再びドアを開けベッドを見遣れば、漸く体を起こした彼が見えひとつの難関の突破に密かに安堵し。ベッドに足を進めつつ「さて、では速やかに御着替えをお願いしますよ、」と笑み携えて声かけ)

お前が言った従順という言葉が真実かどうか確かめてやろうと思うんだが、どうだ？
(ベッドから起き出し隣接する洗面室で顔を洗って戻れば着替えを手にした相手が目に入り。差し出しされた着替えを相手に持たせたまま何の躊躇も無くバスローブの前を緩めれば彼の手元から肌着、シャツ、ジャケット…とひとつ、ひとつ手に取り身に付けていき。先程相手が発した従順な下僕という言葉が頭を掠めては確かに彼ほど忠誠心が強く己の望む以上の事が出来る奴に出会った事はないとふと思って。それを証明するかの如く今朝のスーツも年明け初日には打ってつけの組み合わせで且つ肌触りの良さから己の好みをしっかり把握しているのが伺える。しかし従順という言葉がどうにも引っ掛かり何処か挑む様な口調で問い掛けながらベッド縁へと腰掛ければ片足組み視線は相手に向けて反応を待ち。)

勿論構いませんよ。執事たる者に二言などもっての外。御要望でしたら何なりと仰って下さい
(一度ベッドから体を起こせば先程までとはうって代わって速やかに着替えを進める彼。此方の用意した衣服を、落ち着きがあり且つしなやかな動きで身に付けるその動作を眼を細めて眺めて。己の１日の活動の進行を妨げているはずのその一時さえも心地よく愛おしい。と、一連の作業が終わると同時に挑戦的な質問を投げかけられる。あまりに突然の質問に相手の意図を探ろうと僅かに思案して。しかしそれも直ぐに辞めてしまい、此方も相変わらずの挑戦的な煽るような口調で返す。実際のところ質問の真意や意図などどうでも良い。真実がどうであろうと彼からの問いかけに応えない理由など無く、当然の様にYes以外の選択肢は無い。そう密かに呟いては続く言葉を待ち、にこやかに相手を見つめて)