鯨木かさね 2018-12-31 13:01:56 |
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>鯨木さん
…え、──本気なの?
(覗き込んだ彼女の顔色を見て小さく目を見開きまさかと思う。何か言いたげな微かに潤んだ彼女の瞳、そんな彼女に今睨みつけられても猫の威嚇よりも可愛いそれに動じることはない。実直に振る舞おうとするのは彼女らしいがそれも長くは続かなかったらしい。倒れ込んでくる体を咄嗟に抱きとめてはその体の熱さにまさかの考えが確信に変わった。そして思わず思ったままの言葉が口から零れる。腕の中の彼女は今にも意識を手放しそうで、密着する女性らしい柔らかい身体の感触や少し速い呼吸、長い睫毛、それらに目を奪われるがドンッと背後から人にぶつかられたことで一気に都心の騒音が耳に流れ込み、此処が信号待ちの人が行き交う場であることを思い出す。周囲からの好機の目に不機嫌に顔を顰めるも彼女を突き放すわけにもいかず、お決まりのタイミングで訪れたタクシーを呼び止めると軽々と彼女を横抱きして車内に押し込む。このまま彼女の事務所を告げて自分はお暇すれば良い、もしくは彼女の“同業者”に彼女を売りつけてやるか…、しかしそのどちらもせずに自分も後部座席に乗り込むと新宿の事務所を告げていた。そして隣に座る意識があるか否か分からない彼女を見て「おーい、生きてるー?」と柔らかい頬をプニッと人差し指で押してやった。)
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