鯨木かさね 2018-12-31 13:01:56 |
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>鯨木さん
(この状況において次に続く行いを本気でするつもりなど更々ない。彼女が此方が本気でないのを察しているかは別として、裏で長く生きてきた彼女もこの後の行いを理解しているはずなのに、ゲームセンターでの行動や料理を指示したときと同じ表情で抵抗らしい抵抗はしない。仕事や取引となればここまで無になれるのか、人外とは言えどこか哀れむ表情で顔を上げかけたところで彼女が口を開く。自分の行いもそれに対する報いも全て悟った言葉。だからと言って彼女の犯してきた罪が帳消しになるわけではないが何故か紡がれる言葉が清く聞こえ、一瞬見えた気がした紅い瞳に惹きつけられたのもあったのか、いつの間にか彼女の発する声に引き込まれていた。気付けばすぐ近くに感じる体温と鼻腔を擽る髪の香り…、つい先程自ら迫ったときよりも鮮明にそれを感じた。数秒思考が停止して身動きが取れずにいたが、ゆっくりと頭が回り始めた途端、ふっと吹き出し始めは小さく段々声を大きくして笑いだし、ピタッと笑いを止めれば上半身を起こし彼女を見下ろして、「最高だよ。この状況になっても無反応か意味がないといなされるのは予想していたけど、殺されたい、に楽しかった、なんて。」恐らく最後の“楽しかった”は本気だった。それを理解しながら、一瞬彼女に引き込まれた自分を誤魔化すように技と貶す言い方をする。「でも、俺は俺に殺されても良いなんて言う奴は殺してやらない。殺されたくない死にたくないと思ってる奴を貶めて殺るほうが数倍楽しいからね。…あ、でも楽しかったのは俺もですよ。」へらりと調子の良い口ぶりで言えばヒョイッと相手の上から退いてソファーから少し離れて「楽しかったのなら、また会いません?次は鯨木さんの行きたいところで。」と自分でも思ってもみない取引抜きの誘いをする。楽しい…、彼女といるのは確かに退屈しない。それは“観察”という意味でだ。人外には興味がないはずなのに彼女から感じる気のせいともいえるほんの僅かな感情の動きが癖になっているようだった。)
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