鯨木かさね 2018-12-31 13:01:56 |
通報 |
「…その質問にはお答えしかねます。彼には率直に気持ちを伝えて振られた身ですので、もしあの猫が岸谷新羅様であったとして私は助けるかも知れませんね。ですが、それは彼への借りを一つ返したそれ以上の感情は抱かないと思います。」
(さすが情報屋のだけはある。事細かにあの事件のことを語る彼は自信が岸谷新羅に好意を抱いていたということもしってた。挑発に挑発を重ねる彼に顔を覗かれるが、メガネの奥の瞳は揺るぐことなく。自分のことなのに客観的に、外側から見ただけのような発言には理由があった。先程猫を助けた時と同じなのだが、心と体、感情とこの身体は時々自分でも予想できない程ちぐはぐなこうどうをとってしまう。それが、彼のせいなのかどうかまではまだ分からないが自分の中に意味不明という名の僅かな感情がある事も事実だ。こちらの反応を伺う彼は楽しんでいる様子で、腕にはめた時計をちらりと見て「────それとこれは今は別問題です。私に人間的感情が有るにしろ無いにしろ、商品の受け渡しの時間までそう余裕もありません。大人しく居場所を教えて頂けないでしょうか…。」これ以上、彼との戦闘を続ければ約束の時間までには間に合わない。相手の納得のいく形にするにはどうすれば、脳内で思考を巡らせて。導かれた答えを口にした、「───取引しませんか?此処で商品の居場所を教えて頂ければ私にできる範囲に限りますが、貴方の要件をひとつ飲みましょう。」一つだけ言うことを聞く、相手に塩を送るその発言をするのは些か抵抗もあったが今はなりふり構っている時間も無い。もしこれを断られようものならこちらも覚悟は決めよう、次の攻撃に入りやすいよう罪歌を鋭い鉤爪のような形に変形させ手の甲からそれらを覗かせた。)
トピック検索 |