鯨木かさね 2018-12-31 13:01:56 |
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>鯨木さん
(肩に感じる重厚感、それは華奢な彼女とは不釣り合いでただの人間であるならありえない感触だった。直接彼女の戦闘を見たことはないが情報でだいたいの手の内は知っている──否、その力は未知数だ。だからこそ無表情さが場の緊張感を増させ、体の内側から相手にしてはいけないと警告音が鳴り響いていた。それでもなぜだか、このスリルに、人間ではない彼女に、高揚している自分がいた。自然と口角が上がれば前を向いたまま視線だけ少し後ろにやって口を開く、「それは少し違うよ、鯨木さん。たしかに“貴方の”商品かもしれないけど、貴方だけのものじゃない。彼の所有権は決められていないし決められていたとしてもいくらでも覆すことはできる。だから彼は貴方のものであって、誰のものでもある。僕が彼の居場所を言わずに立ち去っても間違っていないと言えますよね。」彼女の言い分は道理に適っている。自分を引き止める理由として筋の取った言い分で間違っていることなんて一つもない。だから自分が言うのは彼女の言葉の揚げ足を取った屁理屈である。言い終わるのと同時に身を屈めて地面を蹴ると体を反転させながら宙を舞って後退し距離を取って、「そう言えばあの仔猫にはあれから会いました?あの仔猫のことは好きでも…、好きだから飼えないというのに、得体の知れない人外は此処までして得ようとする。彼に仔猫以上の価値があなたにあるのかな?」園内を一つのステージのようにゆっくり歩きながらペラペラと別に今話さなくていいことをさも重要そうに軽快に話す。そもそも飼うことと商品、仔猫と人外の彼を同じ土俵で比べること事態ズレているが、すぐ戦闘になるのを避ける時間稼ぎくらいにはなるだろうかと公園の入口に近づきつつピタリと足を止め彼女を見やった。)
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