鯨木かさね 2018-12-31 13:01:56 |
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…確かに、私の傘1つでこの猫の命は助かりませんね。(感染症や、飢え死に当然この傘でこの猫の腹が膨れるわけでもない。1枚上手だった彼の意見に賛同しつつ、笑顔でカフェへと誘われた経緯を少し考えた。この後の予定が入っている以上、これ以上の道草を食う訳にはいかないのだが、今も尚鳴き声をあげるその猫の安否を心配になる。この先にあるカフェと言えばひとつしか見当たらない、日々の少しの道楽である雑誌を拝見した時気に入った箇所には折り目を付ける。その折り目のひとつになったのがその先のカフェで、豊富な品種を揃えたその店にはいつか行ってみたい願望はあった。そして、この猫ももしかしたら引き取り手が見つかるかもしれないと2つのいい事がそびえ立った今。この後入っていた案件を明日に回すか否か冷静に考えた、再び聞こえた小さな鳴き声に後押しされ、鞄から素早くスマホを取り出すと無言で耳へとあてた。「澱切社長、鯨木です。緊急の案件ができてしまいました、お昼から予定しておりました全ての業務を明日へと持ち越ししても宜しいでしょうか?」業務的な口調で掛けた先は、自身の主とも言える澱切社の社長、澱切陣内の番号。まあ、それは建前上の関係であり幻影でもあるのだが自身の意見が最も優先される立場にも関わらずマニュアル道りの話を済ませ、携帯を切った。立て掛けた傘を仕舞い込み、小さな身体を抱き抱える。じたばたと手足をばたつかせるのを窘めながら口を開く「…では、僭越ながら御一緒させて頂きます。」路地裏の先にある猫カフェへと歩みを進めた。)
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