. 2018-12-07 23:18:18 |
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みんな呆れるほどよく飲んでいたからな、無礼講の祝い酒とはいえ主役のおれたちもそっちのけで。――いや、いっそ誰も起きてくれない方が気楽で良い。宮殿が静かなうちにまた抜け出してやろう。
(宴の席では身分の別なく誰もが気持ちよく盃を酌み交わしていた。まるで婚礼の宴とは名ばかりに彼らが酒を飲むための口実なのではないかと思えてくるほどで、その時の賑やかな光景を思い出しては少しだけ苦笑いを浮かべたが、その飲み過ぎが原因で朝を迎えても宮中が静まり返ったままとなっては大事だろうと今度はくっくっと喉の奥に笑いを押し殺し。自室の前まで来ると部屋の側に控えていた女官に一言二言命じ、女官がその場を立ち去るのを見届けてから強く音を立てないようゆっくりと戸を開くも、今こうして隣に立つ彼女が始めにこの部屋を訪れた際に見せた表情が頭を過り、次の言葉を発するのが少し躊躇われてしまう。妻を自室に招くという至極当然の行為にさえこれほど不安を抱くのは、それだけ彼女に惚れているからなんだろう。支配したいのではなく歩み寄りたいのだという想いが少しでも伝わってくれたら良い、横並びだった身体を半ば相手の方へ向け、蝋燭の薄明りの中で視線を合わせて。)
…もう少し話さないか?あの女官がすぐに茶を運んで来る。身体が冷えたままでは寝つけないだろう。
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