紙屑 2018-10-21 07:48:21 |
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( 静かな夜はどうしても目が覚める。いつも雨が降っているような街に住んでいる所為だろうか。偶に晴れた夜が来ると其の静けさに苛まれて、時計の針が一つ隣へ動く音や布団とパジャマの擦れる音がやけに大きく聞こえて。まるで世界にたった一人しかいないような幻覚に陥り眠気が彼方へ飛んでいってしまうのだ。今日もそう。しんと静まり返った自室内でシーツにくるまってみても胸を蝕む孤独感は取れず、奮闘はしてみたものの結局寝ることを諦めて床に足をおろした。サイドテーブルに置いた携帯で床を照らしながらドアの前まで足を進めると、大きな音を立てない様に開きゆっくりそうっと廊下へ一歩踏み出して。誰も彼もが寝ている時間なれば廊下に漏れる光など一つも無いのは当然なのだが、それが一層孤独を浮き彫りにしては込み上げる吐気に口を押さえ乍ら早足で廊下を抜けて階段を下り。直ぐ脇にあるリビングの扉を急いで開くと片手を差し込んで壁際のスイッチを押し、そうして明るくなった其処へ入って漸く一段落。はふ と無意識に止めていた息を吐いた。此処にきても1人であることに変わりはないがテレビがあるだけ幾分か気は紛れるだろう。スイッチを入れて音を小さくしてから暫く画面を見続けてみたものの特に興味がある内容ではなく、然し他に騒がしい番組も見つからなければ諦めてリモコンを元の場所に戻し、長い夜を共にする珈琲を作りにキッチンへと爪先を向けた。 )
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