亜人少女 2018-10-19 19:15:50 ID:dc9cacd2c |
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(薄い雲がゆったりと流れていく青空の下で、秋風は森を鮮やかに染めていく。ここは山の中に伸びる、ひたすら細く長い道……元々は鉱山と労働者の集落に繋がっており、重要な交通路だったのだが、数年前に鉱山が閉鎖し、集落も廃墟と化してからは通る者がろくにいない。いるとすれば、"鉱山に立ち寄らず、都市間を移動するなら他にもっと良いルートがある"ということを知らない哀れな旅人か、そういう正道のルートを知っていても敢えて利用したくないような訳アリの人間ばかりだ。ひと気のない道には烏の声がうら寂しく響いているし、魔物が飛び出してきそうな気配も十分である。しかし、今ぐらいの時期であれば、色彩だけは心持ち賑やかであって。)
へん、こんな感じの方が居心地がいいや。
(一枚の紅葉が風に踊り、駆けるように何処かへ飛んでいった様を見送った後、腕を後ろに組めば、誰に聞かせるともなく独りごち。人間のいない場所……静寂が心地よいのは事実であった。しかし、一人でいることには相応のリスクもつきまとう。つまり、食料の確保も危険への対応も全て自己責任なのであり。独特の獣臭のお陰で接近には気付いていたが、いよいよ背後の茂みからグルルル……とうなり声も聞こえてきて。常人であれば、ぞっとするべき場面なのかもしれないが、丁度肉が食べたいと思っていたところ、上手い予感に思わず頬が緩んでしまい。振り向けば、草木の中に潜む影に向かって、挑発的に身ぶりもつけ「来いよ。もうすぐ冬だもん。お互い、食いだめしておきてぇもんな!」と声をかけ。それが合図とばかりに飛び出してきた大きな熊に正面から立ち向かうと、相手がこちらの首でも裂こうというのか、突き出してきた腕をわっしと掴み、そのまま、自分の頭上を通して半回転させ、思いっきり地面に叩きつけて。土埃が舞うのと同時に、相手が漏らした低く苦しげなうめき声に良心がチクリと痛んだものの、ここで手を緩めるわけにもいかず。せめて一撃でと拳を固めれば「ハァアッ!」と気合いを込めて、それを相手の喉笛に叩き込み。……手応えを感じ、一瞬のうちに勝負をつけられたことを悟る。ビクリと身体を弾ませたのを最後に動かなくなった大熊を見下ろせば、やや乱れてしまった自分の前髪に触れながら、ボソボソと)
ふん……後はどう捌くかってところかな。
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