執事長 2018-10-04 22:19:25 |
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>レベッカ
(貴女を捕食する気なんて、更々無かった筈なのだが。人の世からかけ離れた血腥い館へ拉致されたにも関わらず、心から楽しそうに笑う貴女に興を惹かれた延長上で食欲という本能を呼び覚まされてしまったようで。全身の筋肉を強制的に弛緩させられ、凭れる様に此方へ倒れ込む貴女を胸板で抱き止める。混乱を極めるであろう貴女の問いに、敢えて解は渡さない。空いている手を貴女の頬へ伸ばし、指先でそっと涙を拭って「……やっぱり、君も泣いてしまうんだね」それが己の捕食の影響なのか、それとも貴女の心の揺動によるものか。指先を伝う綺麗な涙をじっと見つめながら、密やかな声音で呟くように一言。もう一度手の甲へ口付ければ、今度は捕食する記憶を指定する――それは、貴女の母の存在。成績や掃除の手伝いを褒められて感じた喜び、あの日口にしたアップルパイの味、いつでも貴女に味方してくれた誰よりも信頼できる存在――その記憶を、顔も名前も声も全てを、ごっそり抜き取るように唇から食して。「ねえ、レベッカ。君がテオや彼の使い魔と出会えて幸運だったように、俺も君に出会えて幸せだよ」…何故なら、美味な記憶を味わうことが出来たから。貴女が自身に出会ってしまったことはきっと不幸に属されるのだろうが、肉体的な激痛や苦しみは一切与えられない捕食は、客観的に見れば幸運で。再度、貴女の手の甲へ唇を寄せる。今度は、すぅぅっと多くの記憶を吸い込む。家族のこと、友達のこと、テオのこと、使い魔のこと――全ての思い出を死神は吸収していく。黒煙のローブは吸い取った記憶に比例するようにどんどん大きさを増して、終いには2人をすっかり煙の闇へ閉ざす様に包み込んでいて。「さあ、唱えて。…今から君を食べる、俺の名前は何?」唇を離した頃には、もう貴女自身の情報も殆ど食べてしまった後。貴女に残されているのは、自身の名前と、眼前に鎮座する死神の名前と、穢れを知らない魂だけ)
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