旦那様 2018-09-16 16:46:52 |
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( すす、と静かに閉まった障子を見つめて大きく息を吐く。大変な事になってしまった…と頭を抱えるも後の祭り、先程自分で言ったように風呂の支度を、と箪笥から夜着を二人分出してくると小脇に抱えて、脱衣所までの道のりをゆっくりとした足取りで歩き。使用人達のものと主人のもの、風呂が二つあるのも驚いたが、初めの頃はこの長い廊下だって迷って仕方が無かった。自分の家で道に迷う、なんて恥ずかしい事があったにもかかわらず、夫は何度でも優しく間取りを教えてくれた。風呂場に着くと誰の目が無い事を確認し、おそるおそる着物を脱いで胸下にタオルを纏い髪の毛を軽く結って、どきどきと煩く鳴る心臓を抑えながらぱっと湯で身体を流す。胸を張って見せられるほどの身体付きでは無い、夫の好みが妖艶な美女だったらどうしようか──。声が掛けられない程に気を張っていたのに、ゆらり、ゆらりと心地良さげに揺れる真白の尻尾と耳が可笑しくて、つい緊張の糸が解け笑ってしまい、湯船の枠に腰を下ろしつつ、 )ふふ、──お待たせ致しました、旦那様。余り自慢出来る身体で無くて御免なさい…湯加減は如何ですか?
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