はじめに 狐でも人でもない、その間。狐の耳と尾を持つ人の姿をしたその者を──人々は異形と呼んだ。 異形は人々の暮らしの中から迫害され、行きあてもなくただ静かに生が終わるその時を待つ。ただ少し、ほんの少し人と違うだけ。たったそれだけの事を、人は許してはくれなかった。 「貴方も一人なのですね」 そう声をかけたその人物は、後に異形の主人となる人物であった。