名無しさん 2018-08-16 14:59:05 |
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(あの出来事から1週間。この町は、黒い噂が流れ始めていた。あの日、彼を追ってきた集団の1人が、目撃情報や情報収集の手法として「この町に、人を喰らう吸血鬼が出た」と言い回ったのだ。ここは、都会より外れた小さな町。噂は三日三晩であっという間に広がった。そして、人々は口を揃えて言う「恐ろしい」「穢らわしい」「殺すべきだ」と。皆、吸血鬼に対する対抗心を募らせる一方だ。それに加えて、あれ以来昼夜問わずにあの集団が町を出入りするようになった。きっとまたここに現れるとふんだのだろう。あの日から時間が経ち、自分でも彼に対する気持ちが薄れ、消えるのではないかと思った。何事もなかったかのように、前の日常に戻るのかと。しかし、日を追う事に彼の事が気になる。あれから、どうしているのか、傷の具合はどうなのか、とだがきっとこんな思いは相手にとっては邪魔でしかないのだろうとも思える。そして、少し異様ではあるがまた前のように教会でお勤めする日々が始まり、今日もその勤めを終え、寝る様の白色のローブに着替えて布団に潜るとすぐに睡魔と体の怠さ、あの時の左手首の痛みが重なり、眠りに誘われていく。やや、意識が現実に戻り始めた頃、ギシギシと家鳴りがするのを聞いていたがまだ頭と意識半分は微睡みの中で、起きて確認しようとは思わない。
そして、日が顔を出し始め朝やけが美しく空に広がるころ、再び意識が引き戻されると誰かに声をかけられた気がした。)
ん…だ、れ──!?
(神父様が起こしに来たのかとまだ微睡みが残る頭のままモゾモゾと体を起こすと、ぼやぁ〜と人影が見えたが神父様ではないようだと、やっと目を擦って開けてみたところで相手が誰なのか分かり驚く。彼だ。あの日以来、全然姿を見せなかった相手が今目の前にいる、と理解するまで数分かかったが、相手の変わりない顔を見ると安堵したのか、小さく息をついて笑顔を見せて)
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