名無しさん 2018-08-16 14:59:05 |
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(神は罪を裁く、と人間は口々に言う。だが、その罪を決めるのは一体誰なのか。神か?人か?今目の前にいる男だって、きっとそうなのかもしれない。私は罪を犯しているのかもしれない。ただ、なにが罪なのか。傷を癒したこと?あの時ナイフで命を奪わなかったこと?それとも、彼自身──?その区別を付けるのは、私なのか、神か、他でもない誰かか?今ここでそれを決めるのは難しい。いつの間にか、夜空を覆っていた黒い雲は裂け、真っ白な月が顔を出す。月光がステンドグラスを照らせば、教会は7色の光に包まれマリア像を優しく包む。その中にある、異様な空気。冷たく、重く人を離さない。男の気配は先ほどより一層重くなる。本能が危険だと警鐘を鳴らすも、蛇に睨まれた蛙のように体が動かない。呼吸すらも忘れてしまうのではと、嫌な汗が額から頬、喉を伝う。男の瞳がこちらを見るが、その眼はまるで狩る側の眼だ。闇の中で光を探すような瞳。男の問いかけにぐっと、胸の前の手に力が籠る。今ここで大声を出せば、誰かが来てくれる。そうすれば男は逃げるか、それとも来た者達の命を奪うか。それが、賢明の判断なのだろう。でも、何故か体は動かない。いや、今は動かないのではなく“動きなくない”のだ。きっと、彼は今までもこれからも命を狙われるのだろう。その理由をはっきりと聞いたわけでないが、何となくそんな予感がする。それでも)
私は────
(やっとの思いで出し言葉を遮るように、教会の外が慌ただしくなるのが聞こえる。足音と数人の男の声。その声には聞き覚えがあった。先程、見かけた男たちだろう。きっと、彼を探しているのだ。このままでは、この教会に乗り込んでくるのも時間の問題だ。現に、足音も少しずつ近づいているようにも思える。時間がない。焦る気持ちを抑え、後ずさる足に力を入れて相手の顔を真っ直ぐみる)
私は、貴方を見捨てたくない……邪魔なら殺したっていい…!でも、今は貴方のそばを離れたくない──!!
(理由は今は分からない。だが、そういった自分の本当の答えがいつか見つかるように、貴方の世界に居たいと思い、どこか力強く言えば、言い終えるかその前か、凄まじい音と共に教会の扉が開けば強いかぜが吹いてあまりの強風に目を瞑って。)
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