名無しさん 2018-08-16 14:59:05 |
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けが人を放っておけなかっただけです。私がただの町民でも同じことをしました…。
(聖職者らしい、と言われると目をぱちくりさせては小さく笑って。前にも一度誰かに同じようなことを言われたことを思い出して。何時の日だったか、ある時こんな小さな村に異国の負傷兵がやってきたことがあった。戦争に負け、国を無くし路頭に迷っていた。町の医者は少なかったし、ここには大きな病院もない。だから教会に務めていた私も手伝いに向かうことになった。不慣れなことだったが、1人でも多くの人を傷から癒してやりたいと思った。だが、自分の担当にもったある1人の兵士は、自分と同い年くらいで致命傷とも言える深傷だった。それでも、傷の手当をした。だけど、彼はずっと「死にたい」と言っていた。もう良くならないから、と命を諦めていた。それでも、命を救いたいと必死になったが結局、苦痛だけが彼の心にも残り数日後、自分の目の前で息を引き取った。最期に「価値のない命を助けるとは、いかにも聖職者のすることだ」と言い残して。その言葉は、恨みとも憎しみとも悲しみともとれた。自分がやっていたことはただの自己満足なんじゃないか、と聖職者という肩書きにハマり周りが見えていなかったのではないのか、と。いつかあの日の彼を、もう瀕死だと分かっていた彼の手当を施した答えが見つかるように、ここまで生きてきた。そして、今目の前の男と出会った。相手が言わずともわかる。彼は自分が関わってはいけないような世界に生きている人で、怪我を負ったから、という理由もきっとまだ聖職者の肩書きの言い訳になるかもしれない。それでも、助けたいと思った。彼の瞳を見た時、あの日の兵士のそれと似ていたように思えた。表面では、自分に関わるなと壁を張っていてもその奥に見える孤独──その揺らめきを彼にも見た気がする。だから、傷を直した。聖職者としてではなく、1人の人間として彼に声をかけた。どこか昔を懐かしむような優しい笑みに戻れば上記を言って)
だ、ダメですよっ!血なんか舐めたら、感染症の原因に────!!
(相手が手を動かして感度を確かめてそれなりに動かせると安堵したのも束の間相手が、わずかに残った血を舐め始めて慌てて、相手の手をとって止めるが、その瞬間に見た、あの瞳の色。先程までハッキリとではないが、ゆらりとしたあの色が瞳の中で広がっている。それと同時に言葉を失いただ唖然とするしかなかった。そして、相手の人間とは異なる気配が何であるのか、1つの疑問がまだ正確ではないがゆっくりと、しかし確実に答えと繋がっていくのを感じると相手からゆっくりと手を離して、立ち上がれば半歩ほど後ずさりをして)
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