名無しさん 2018-08-16 14:59:05 |
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――怪我を負った人の…か。何とも聖職者らしい発想だな。
(問いに戸惑いながら此方を見据えられるも、すぐさま口出しした指示に従い先と違った手付きで的確な処置をし、炎症を起こした箇所に次々と包帯が巻かれ跡が隠されていく。同様に、切り傷を塞ぐために指先に触れられた際、火傷によって多少熱を帯びていたとしても人の子に扮しても隠しきれない程と、明らかに違う体温に眉一つ動かされず。威勢よく治療を申し出たと思えば素人臭く、怯えたかと思えば柔らかな笑みを浮かべる理解しがたい言動の数々に、皮肉めいた言葉をぽつりと呟き。――何時以来だろうか、私欲に溺れた人の子意外とここまで口を利き、目を見て語り掛けてくる者は。意図して周囲を寄せ付けずに過ごした時期が続いたからか、悪意なく接する感触がこそばゆく、その昔に同じように関わりを持った人間らとの出来事が頭を過る。懐かしさの反面、人間の本質は反吐が出る程見飽き、結んだ契りさえも出来心一つで簡単に移り変わる脆さは既に痛感してきた。だからこそ、何時の日か目の前の相手も――。徐々に変色する瞳の奥で零れた憂色を悟られぬよう影を落とし、処置を終えた腕を引き感覚を確かめるように何度か掌を握り。追手に仕掛けられた液体の匂いが鼻から抜けないからか、未だ感覚が鈍いものの幾らか戻ってきた五感を感じながら、手の平に付いた味気のない自身の血を舐め始め。)
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