ロル好きな人 2018-06-13 17:06:56 |
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( 手術、失敗したんだって。____ 淡々と結果を口にした彼の視線は私ではなく窓の外に向けられていた。一面を白で囲まれた、ミルクの海の如く真っ白な病室の中。落ちた言葉は空気に流され、窓枠越しに見える青天の向こうに消えていった。私は何も言わなかった。彼も、何も言わなかった。個室内を支配しようとする静寂に抗うのは毎日勤勉な壁掛けの時計だけだった。何らかの原因で今時計さえも動きを止めてしまったら、此の光景を見て世界そのものが止まっているのかと勘違いする人も居たことだろう。____ 窓の外を鳥が飛んでいく。そうして漸く動き出した私たちの世界。差し込んだ日光に反射して光った彼の頬を見ない為に正面から少しだけ視線を下げる。視界に入った規則的に上下する彼の心臓が近いうちに止まってしまうだなんて少しも信じられない。今にもシーツと同化してしまいそうな患者服には汚れの一つも見えなくて、同じ純白でも今度着るのは祝いの席がいいねとふざけていた入院初日が途端に愛おしくなる。次に彼が純白を纏うのは暗い棺の中で眠る時だけ。その時はきっと彼自身も真っ白になってしまっている。目を閉じて、口を真一文字に結んで。想像するだけで奥底からつん、と込み上げた形容しきれない感情を堪えるべく眉間に力を籠めると何本もの皺が寄るのが手に取る様に解った。恐らく相当不細工な顔になっていることだろう。だが彼は目もくれず、もう、来なくていいから。と突き放す言葉だけを掛けた。その言外に含められた帰れの意思を汲み取ってあげられたのは、物心ついた時から一緒だった所為かもしれない。それを無視して居座ると怒ることも想像に易かった。最後くらいは良い彼女で居てあげなきゃ。お土産と御祝いの品として買ったフルーツの詰め合わせをそっとサイドテーブルに置くと、挨拶も掛けずに真っ白な病室を後にする。病院の廊下を患者や看護師が忙しなく動きまわるのを見て、漸くこれは現実なんだと認識が追い付いた。それと同時に、幻想に浸っていた脳が確かな死を理解するや否や眼球の奥から熱がせりあがって。泣いちゃ駄目だ、何よりも辛いのは彼自身であって、私じゃない。そう、死んでしまうのは彼の方なんだ。彼の、方。 ) …… ッ、なんで…っ! ( 堪えきれなかった感情が言葉になり涙と共に床へ吸い込まれていく。病室で寝たきりの彼を思い出すと立っているのも億劫で、壁際に身を寄せると蹲って手で顔を覆った。荒々しく手の甲で目元を擦ると悔し涙は拭いきれたが、其処に痕跡を残す様に肌の赤みがちくちくと存在を主張する。____ 受け止めたくなかった。彼が死ぬことも、私が残されることも。一年後には彼がこの世のどこにも存在しなくなってしまうことだって嘘だと言ってほしかった。最後に見た彼の後ろ姿が瞼の裏に焼き付いて離れない。嗚呼、… 嗚呼、神様なんて、きっと何処にもいなかったんだ。 )
(/投稿とお題拝借失礼いたします…!ヒント無しの一からシチュエーションを考える事が苦手な自分にぴったりな場所を見付けてしまい、最初のお題を見て浮かんだ衝動のままに文字を打ち込んでいれば吃驚するほど見辛い文になってしまいました…;;
後学のために感想を求めさせて頂くのですが、途中で疲れてしまった方は遠慮なく読むのをぶち切って下さいませ……!また、自分では「場面の切り替え」と「省略すべき部分(不要な部分)」が課題点と思っておりますので、その2つに関する点ないしは他に気になった点など御座いましたら、はっきりとお教えくださると大変有難いです…!宜しければお願い致します( 土下座 ) それでは、スペース有難うございました! )
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