匿名さん 2018-06-10 21:12:24 |
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成合
( 頭にかけられたふわりとした感触。見るまでもなくタオルだと分かって、嗚咽が一瞬だけ止まった。それでも言葉だけがぐさりと刺さって抜けない。遠ざかっていく足音とタオルから香るニトロの甘さがもう終わったことなのだと指し示してくる。それがとんでもなく怖くて、目元を必死に拭ってみても止まらない。それどころか彼の匂いが余計に鼻腔をくすぐって嗚咽がひどくなるだけだ。彼の名前を呼んでみても、待ってなんで引き止める言葉を紡いでみてもそれらは全て嗚咽になるだけで、涙で視界はぼやけるし顔も前髪も制服だって全てボロボロだ。アイロンだってかけたのに。ずっと鏡や反射した携帯で前髪を気にしていたのに。やらないよりはましだって、マッサージもしたのに。全部が全部、抱いてしまった疑問に、迷いに台無しにされてしまった。もう彼との繋がりは濡れてしまったタオルしか残っていなくて、それすら繋がりだと主張できるかも怪しい。 )
ッぐ、
( あの時ただ嬉しさだけを感じていられたら、笑顔で頷いていられれば。そんなたらればはもう通用しないんだって分かりきっていた。それでも希望だけが捨てきれなくて、その場にへたり込む。ぼやけた視界を何度擦ってももう彼の後ろ姿だって見えない。一緒に登校することなんてできやしなかった。結局その後私に優しく声をかけてくれたのは先ほど挨拶をした梅雨ちゃんで、とんでもなく優しい彼女は誰にも言わないと約束をして学校まで一緒に行ってくれた。教室に入っても爆豪のいる方は見れなかった。 )
上鳴
( 両手でパタパタと顔の熱を冷ますように扇いでみるけど、弱風よりも弱風といった風圧のそれが上手く機能しているかは怪しかった。でも早くこの赤みを消さないと挽回なんて夢のまた夢のような話で、女の子にそんな顔をさせることはあっても男が赤面なんぞしちゃいけないのだ。…まあそのご法度をおれはさっきやらかしちゃったわけなんだけど。頭の中で必死に両親の顔を思い浮かべれば自然と顔の熱は冷めてきて、だいぶ平常に戻ったような気がする。いや戻ったとしておこう。安堵のため息を吐いていれば耳郎から聞こえたのは珍しいお礼の言葉で、俺なんかしたっけ、なんてしばし考えてみた。…けど、まあ何も思い浮かばないのが俺のバカな頭。なんか真意が分からないままあーいーよいーよとかも言えねー気がして、そのお礼の意味を聞いてみることにした。 )
どゆこと?俺なんかした?
( 来てくれて助かったって、なんかまるで話すのが嫌だったみてーな言い方じゃん?でも別にあいつらはマジで耳郎のダチなんだろうし、何話してたって質問には自然と答えてたしでまあ意味がわからん。そんなことを小難しく考えているとポンと思い浮かんだ可能性に「あ、」と声を上げ、個人的に真面目に見えそうだと思っている顔で近付き「なんかされたん?」と尋ねた。だって考えられるのってそれしかなくて、なんかやなことでもされてたならそのアフターケアは男である俺がしなくちゃならない。それがなくても単純に仲良いやつの役に立ちたいってのがあるんだけど。 )
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