赤の女王 2018-03-10 15:26:43 |
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… そう?
( 緩く首を傾けてみたが、確かに格好いいと言い張れる出会い方はしていない。彼はラフな姿だったし、話した内容もロマンチックなそれとは程遠かった覚えがある。言われ見れば確かにそうかも、なんて頷いてはくすくす、細やかな笑いを溢し。確りと握られた手に意識を奪われながらも瞳は依然として彼を映していれば、思いがけない優しい表情も見落とさずに。彼のくれる言葉一つ一つに充たされていく感覚は、一体何なのだろうか。一点の陰りを落とした疑問は一応脳内に留めたものの、到着した場所の賑わいに呆気なく興味はそちらへと移り。どこを見ても楽しそうな顔ばかり。今からそこに紛れるのかと思えば楽しいような、寂しいような、と思ったことを見抜いた様に人混みを外れていく足。" 一番良い場所、 " と不思議な気持ちで復唱していれば、徐に見えた特等席にぱちぱち目を瞬いた。彼はいつから準備をしていたのか。フードからドリンクまで置かれた用意周到さに感嘆するあまり軽口には碌な反応も出来ず。一先ず手で示されるがまま足を崩して座ると、ドリンクを尋ねられた処で漸く実感が沸いて。「 んー …、これがいいなっ 」悩む素振りを見せてから手に取ったのはフルーツジュース。今日ばかりはお酒も自制して、溢さないように両手で持ったまま一口分を喉にくぐらせた。「 リディに断られたら1人で此処を使うつもりだったって言ってたけど、…… 他のアリスを誘うつもりは無かった、の? 」ふう と息を吐いてから、遅ればせながら少し、いや随分と気になったことを尋ねてみる。花火がまだ上がっていないのを良いことに、視線はジュースの水面を緩慢に揺蕩い。 )
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