薊 2018-03-04 11:55:06 |
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ああ――…、どうやら、私の敗けのようだ。
(浮き足立つ心に視界を埋め尽くすほどの鮮やかな蒼。先行する彼の色彩に一瞬にして目が奪われた。ぞわり、嫌な予感と裏腹に甘く軋む心。彼へと追い付こうとする足が止まった。あの日、あの時。絶望の中での賭けを思い返し、ふと笑みが溢れた。あの日諦めたはずで、無いことにしたはずの恋心がまた芽吹こうとしているのを高鳴る鼓動が示唆している。元々勝算の無い賭け事だったけれど自分の諦めの悪さにはほとほと呆れてしまってものが言えない。あまりの貪欲さに反吐が出そうだった。腹のなかで蜷局を巻いていた感情が一斉に産声をあげる声がする、ああ、そうとも。もう認めてしまおうか。君が好きだと、君の全てを愛してやまないのだと。溢れた笑みは君の瞳にどう写ったか、もうどうでもよかった、期待なんかしていない。きゅ、と噛み締めた唇に万感の思いを乗せて。今、君に伝えてしまおう。唐突に呟いた私を訝しげに見やる君に歩み寄って、できうる限りの笑顔を見せた。)
…おめでとう、賭けは君の勝ちだよ。私は無様にも君に恋をして…、いや、恋をしていたことに気づいてしまったようだ。
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