《聖母マリアの孤児院》人数制限有/特殊

「おとうさんは、えらい神さま。おねえちゃんはマリアさまで、みんなは天使さま。むつかしいことはわからないけど、たぶん、ここがわたしの天国なの」

名前/ピアニー（Peony）
年齢/ 女
性別/16
容姿/ストロベリーブロンドと呼ぶには赤みの強い薄桃色の髪は顎につく程度で切り揃えている（現代で言うボブカットに近い）。手入れで神父やシスターの手を煩わせないようにするための短髪だが、元々の癖毛と寝癖で結局は梳かしてもらわなければ表に出られないほどくしゃくしゃ。年の割に幼い顔立ちでまどろんでいるように覇気がなく、口元は幸せそうに緩んでいる。同じく眠たげなたれ目は右が深い青、左が薄い水色。顔を真っ二つに裂くように斜めに縫い目が走り、傷から右の肌は白く、左の肌は浅黒い。痩せっぽちの身長160cm。被るだけで着られるネグリジェのようなワンピースに無い腕を隠す大きめのショールをすっぽり羽織る。胸元にはテムズ川の汚泥から拾った錆びたロザリオを下げており、大切なお守り代わり。
顔の皮膚、片目、胴、片足は全て別々の孤児から繋ぎ合わせたものであり、特に顔の左半分、左足は一目で白人のものではないとわかる褐色。上半身は肌の色こそ同じだが白人の"少年"のもの、故に16になっても悲しいほどに華奢なまま。しかし本人は娼婦にならなくて済むよう神様がこうしてくれたのだと能天気に捉え、神父ともシスターとも風呂に入れる体を喜んでさえいる。

性格/ 歯車が2つ3つ足りていないようなおっとりぼんやりとした愚鈍な娘。薬漬けの頭はいつだって霧がかかった夢見心地、痛みに鈍く喜びに敏いため馬鹿にされても話しかけられた嬉しさににこにこと笑ってしまうせいでまた馬鹿にされる、の繰り返し。嘲笑われることはあっても他人を嘲笑うことはないのが唯一の美点だが、単に揶揄を思いつく知恵が無いだけ。実年齢より弱い頭、なにかと手間のかかる体から院内では世話をするよりされるほう、甘やかすより甘えるほうと年少者のような扱いで、本人も他人に甘えられる幸福をたっぷり享受する甘ちゃん。しかし溢れるドーパミンの影響で笑顔は絶えないものの何も考えていないわけではなく、近頃の悩み事はかさむ自分の薬代。痛みに耐えられる極限まで薬の量を減らしてみたり、小遣いを得ると神父シスターに隠れてアヘンを買いに行こうと企てたり、どうにか貢献できないものかと頭を悩ませる。身をすり減らしても彼らに報いたいと願うのは信仰心の高さも理由の一つ、ただし聖書は食前の祈りしか読めない。

備考/イーストエンドのスラム街で生まれ育った孤児。両親が早々とアヘン中毒で死んでからは一日中汚泥に身を浸す「泥ひばり」とも揶揄されるテムズ川のドブ漁りをやって食いつないでいた。それでも稼ぎが無い日は他の貧民同様スリや盗みに手を染める事もあり、そんな過去から両腕のない不自由を「泥棒が腕を切り落とされるのは当たり前」と受け入れる。体を切り刻んだのは中流階級の医者であり、端金と工業廃水に浸った肉体の有毒性云々という最もらしい文句につられて手術の実験体にされてしまった。全身のパーツは同じくどこかの孤児のもの。体をすげ替えられても生きているのは最新医療とやらの賜物かそれとも噂通り化け物だからか、腕以外成功品と呼んで良いはずなのに再び捨てられてしまったのだから後者に近いのかもしれない。
継ぎ接ぎの体で彷徨う姿はそれだけで後ろ指を指されるもので付き纏う噂も様々。ある者には母国の小説に喩えてフランケンシュタイン、またある者には巷を騒がす切り裂きジャックとの関連性を囁かれ、死体を縫い合わせて作った怪物だの被害者の体の一部を寄せ集めたジャックの娘だのと本人も知らないような憶測が飛び交う。


ロルテスト/
孤児院に初めて訪れた時/

…痛い…痛い、痛い…いたいいたい、痛い…
（ばちばちと叩きつけるように降る雨は全身の傷を刺激し、縫い目から染み込んでは肉や骨に冷たい痛みを広げていく。痛みに気を失っている時だけが唯一安らげる時間だというのに、この雨では失神してもすぐ目を覚ましてしまい、凍える唇から声として苦痛を吐き出すことしかやりすごす術はなく。痛い。苦しい。寒い。この狭い路地裏に放り出された浮浪者も中毒患者も水溜りの中で同じような言葉を繰り返し、そして順番に何も言わなくなっていく。きっともうすぐ自分も死ぬのだと、寒さか恐怖かわからない震えに包まれたその時、ふいに雨粒がぴたりと止んだ。見上げた先には揺れる十字架。今は泥水に沈んでいるけれど、いつも神様とやらに漠然と祈りをささげていた自分の十字架とそっくりで。「…神、様…？」呟いた途端にふわりと体が宙に浮き、ああこれで天国という場所に行けるんだ、辛い12年の人生を終わらせられる、そんな解放感にも似た気分で温かな腕に体を預け。しかし、次に目を覚ました時目に入ったのは天使のいる花畑ではなく貧しげな木の天井で。それでもふかふかのベッドに寝かせられ、柔らかい毛布を被り、何より全身の痛みが幻のように消えている今この時はまさしく幸せそのもの。どうしてか妙に溢れる心地良さに目を細めては、傍らに立っていた十字架の男性に視線を移して「…あなた、"神さま"？ここ、天国なの…？」すっかり凍えてしまったせいか、うまく呂律の回らない舌で空色の瞳に尋ね）


（孤児院に来てから暫く経ち慣れた頃)

……おはよう、トーマス。おはよう、デイジー。おはよう、左目の誰かさん。
（ぬるい痛みにほら起きろ、もう朝だよ、と身体中をむずむず擽ぐられて目を覚ますと周りのベッドは既にからっぽ。早くしなければ朝ごはんの時間に間に合わない、そして早く今日の分のお薬を飲まなければくすぐったい痛みもたちまち熱々のフライパンを押し付けられたような痛みに変わってしまう。わかってはいてもお腹の彼に、足の彼女にちゃんと挨拶を済ませてからくるりとシーツの上より転げ出て、広げておいたネグリジェの裾に頭をすっぽり。わたしは芋虫、芋虫ピアニィ、そんな風に歌いながら這うように体を動かすと骨までふにゃりとやわらかくなった気がして着替えもすんなりいくもので。とどめに足の指でキュッと裾を引っ張れば襟ぐりから顔が出てきて準備はおしまい、ひっくり返ったロザリオに「神さまもおはよう」とキスをしてから起き上がり、パンの匂いのする方へゆっくりと歩き出して。
テーブルには湯気を立てるパンと紅茶と野菜のスープと6人の友だち。どれから飛びつくか迷ってしまうけれど、2人の大人と目が合えばやはり真っ先にそちらへふらふら寄っていき「おとうさん、おはよう。寝坊してごめんなさい」とまずは固く痩せた体へ、次に「おねえちゃん、おはよう。ねぇ、今日はね、時計台の夢を見たの」と柔らかな女性の体へ、抱きしめられない代わりにコツンと額をくっつけて。ファーザー、シスター、そう呼ばれる二人は自分の父や姉ではないけれど、そう呼んで怒る人もいないはずで。皆にもおはようを繰り返しながら席につき、まずはスプーンを口にくわえて傍らの瓶から紅茶にお薬をたっぷり移して次は砂糖。くるくる回して溶かし終わったら隣の女の子の足をちょんとつっついて「おねがい、これ、ここに置いてくれる？」、曲げた膝にカップをはさんでもらって溢さず綺麗に全部飲む。けれどパンやスープまではさんで食べる訳にはいかないため、モルヒネのとろとろふわふわした感覚を揺蕩いながら皆の食事が落ち着くのを待って「—ひとくちちょうだい。ひとくちくれたら、わたしのパン、みんなと半分こしていいよ」今度は左隣の男の子をつっつき、つばめの子を真似して口を開け。薬があれば不思議とお腹もぺこぺこにはならない。だから女の子よりお腹が空くはずの彼にパンを譲ることを条件に、食事の手伝いを頼んでみて）


（/keep受理、そして質問に答えていただきありがとうございました！④で参加希望した>10の者です。女の子と言って良いものか曖昧なキャラクターになってしまいましたが、不備等なければ候補にくわえていただけますと幸いです。ロルも実際はもっと短くまとめるよう努力致しますのでよろしくお願い致します！）