ななしのあるじ 2018-03-02 08:10:39 |
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(ふわり。揺れたカーテンから匂う好きだった相手の好きなたばこの香り。いなくなってからもう1日が経つのに、それでもなくならない愛しい香りが恨めしい。テーブルに置いていったたばこを見るだけでもぎゅっと胸が締め付けられる。たばこなんて好きではないのに。置いたままなのは意地悪だ。捨てるに捨てられなくて、引き留めることも出来なくて。部屋の中で貴方を待つ私のなんと虚しいことであろうか。いっそすべて無かったことに。すべて忘れてしまえば気持ちは楽になるはず、なのに、どうして。手はあんなに嫌いだったたばこへと伸びていて。火をつけるだけで貴方に包まれているような気分になる。貴方の真似をして一口だけ吸ってみた煙は想像していたよりもずっと苦くてくるしい。げほ、げほ、と咳き込んだ。心配してくれる人などもう存在しない。もっと見てほしいと我が儘を告げた自分が心の底から腹立たしい。もっと、ちゃんと、少しだけで良いからなんて希望は重荷でしかなかったんだね。貴方が隣にいてくれるだけで充分幸せだった。ほろり、溢れた涙を拭う。大好きだったよ。呟いたはずの言葉は、なぜだか声にならなかった。)
(/好きな曲を元にして書こうとしましたが、やはり難しいですね。暇潰しがてらやりたいことが出来て良かったです。スペース感謝)
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