ねねこ 2018-02-01 14:56:31 |
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(それは酷く穏やかな朝だった。瞼を開けば目の前には廊下が広がっていて、冬の冷たい空気に晒された身体は少しばかり震えている。然しながら身体はまだ暖かく布団から這い出てからそう時間は経っていないらしい、恐らく寝惚けて厠へ行く途中で漸く目が冴えたのだろうと思った。厠へ行くにせよ布団へ戻るにせよ、足を動かさなければなるまいと一歩──ふと、右手にやけに重たい物を持っていると気づくや否や、そちらに視線を向けて呆然と立ち尽くすことになった。己の右手が乱暴に妹の襟首を引っ掴んで持ち上げている。可哀想に肌蹴た首筋からはだらだらと鮮血が流れていて、何があったのかと思考が停止した。右手に上手く力が入らなくて、妹が床に身を打ち付ける。嫌な冷や汗が頬を伝って、無意識のうちにそれを拭った左手には、べったりと赤色の血が付いている。何が何だかわからない。「一体、何が……。」なんて言いながら妹の肩を揺り動かした。物音を聞き付けた使用人が駆けつけてくる足音が聞こえ、ごくんと唾を飲み込めば可笑しなことに『血』の味がして。妙な満足感と焦燥感、ぐるぐると足元が崩れていくような、恐ろしい予感。何より妹の首筋を流れる血から目が離せないことが、一等恐ろしく不安を駆り立てて)
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