◆狸 2018-01-01 00:20:57 |
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>イチ
そう、それでいい。 ( 相手が従順に前を向き、大人しく口を噤む姿はまるで借りてきた猫のよう。先程までの太陽光のような満悦した笑みはどこへやら。凛とした雰囲気を纏う相手に一抹の意外さをまた感じると、くつり、釣り上げた口角は其のままに低い、しかし動物の頭を撫で遣るときのような甘さを持った声で褒めて。「 とは言っても、説明する内容は全てあの化け狸が言ったことを相違ない。その昔、人と妖が同じ世界に住んでいたころ。強い力を持った巫女が二つの種族の架け橋として生きていた、」 それは未だ此の世が分断される前の話。今となっては夢物語とも思しき伝承の紐を解くと、語り手の口振りで話をはじめては、 _____ 架け橋であった巫女が死に絶えて直ぐのこと。一つだった世界が二つに分断され始め、その途上で二つの種族は敵対する関係になった。だが被害が広まる前にそれぞれの世の長が秘密裏に密約を結び、その力を以てして境界線を設け、互いが互いの世にて伝説となった。しかし近年になり、何故か境界線の効力が弱まり見せ始める。そして乗ずるように架け橋であった巫女が人の世にて転生し、その魂を喰らうと妖の世を治める王になれると何物かが吹聴した噂を多くの妖が信じたことで、強い力を持った者は境界線を越え人の世に侵入し始めた。しかし妖の中にも噂に不審感を抱く者たちがおり、それらは異端者として巫女の生まれ変わりと妖の世を守るべく人の世に来た、と。 _____ 幼子に物語を教え聞かせるように、巻物に書かれた絵空事を話すように。相手にとっては到底現実味の無い現実をゆっくりと噛み砕きながら話し終えると、" 分かったか " と一旦確認を取り。此れだけでも相当な情報量なれば、「 分からないことが有るのなら、飽くまでも此方は向かずに今聞いて下さい、」 人通りの少なくなった今ならば口を動かすくらいならば構わないだろうと判断した上で、浮かんだやも知れぬ疑問を解消する場を設け )
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