◆狸 2018-01-01 00:20:57 |
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>八百 晦日
月の遣いならば、そうだね、愛くるしい貴方をあの幻想郷へ連れ帰ってしまうところだけれど … 生憎、月へ帰る予定はないかな。
( 此方を視線で射貫いた彼が口を噤んで暫く、首を傾けようとしたところで息と共に吐き出された声はまるで詩でも詠んでいるかの如く美しい響きを残して。例え事とは勿論知りつつもまさか月の遣いと形容されるとは思ってもおらずに、二度ほど瞬きを繰り返した後にくすり、笑みを溢しては先に詠まれた詩の言葉を借りた返答を成し。存外乗せられやすい此方が最上級とも思しき褒め言葉に気を良くしないはずもなく、今居た位置よりも近くへ足を運ぶと確り彼を見つめ、「 それに、許してもらえるのなら月などよりも私の縄張りに連れ帰りたいものだね 」 依然微笑みを携えた顔の侭、渦巻く欲望をほんの少し入り交ぜた冗談を紡いで。本音と取られたのならば其れも其れで構わないと。「 月、か。うん、いいね。貴方に意見に賛成だよ。ついでに、あの月を肴に月見酒と行くのは如何かな? 」此方を見遣る其の瞳に幾度となく見た己の姿が映しこまれると、言い様の無い征服感に苛まれどうにもいけない。しかし此の状況が何よりも心地の良いものであれば逸らすことなど無論せずに、ただただ吸い込まれないようにと自制しながら彼の提案に乗る旨を告げ。首元に巻いた布へ顔の半分ほどを埋めた今の姿は大凡聞いていた年頃の男に見えず、思わずくすくすと笑ってしまって月見に絶好の場所を脳内に思い描きながら 「 それじゃ行こうか。実は貴方に教えたい場所があるのだけれど、少しばかり複雑な地形でね。迷わないように、私の手を取っていてくれるかな? 」 其れらしい嘘の理由を嘯き徐に片手を差し出して。 )
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