赤傘の名無し 2017-12-22 01:56:54 |
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彼女は雨が降ると現れる。
春の暖かい雨の日
夏の激しい雨の日
秋の冷たい雨の日
冬の静かな雨の日
彼女は決まって僕の前に現れる。
――ねえ、遊びましょうよ。
歌うようにそう囁きながら。
ひらひらと舞うスカートを揺らしながら。
ぽつりぽつり、降り注ぐ雫のように僕の心に波紋を広げる。
彼女のことは何も知らない。
名前も、歳も、何も。
ただ、雨が降ると必ず現れる。
苦しくて痛くてどうしようもないとき
ぽたりぽたり、僕の頬に雫が垂れる。
…また雨だ。
ふいにふわりと頬を撫でられた。
見上げると、彼女がいた。
いつもと変わらない服装で、いつもと変わらない笑顔で
――ねえ、遊びましょうよ。
と僕を誘う。
降りしきる雨の中へ
傘もささずに、ずぶ濡れで。
濡れた理由が雨なのか、何なのか分からなくなるまで。ずっと。
ああ、そうか。彼女の名は――――
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